だらだらと。
>以下、単発話
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「オレ結構面食いっつーかさぁ。基本的に男も女も綺麗な子が好き」
いつも通りの帰り道、すっかり闇に包まれた町並みをささやかに電灯が辺りを照らす中で、唐突に慎吾は喋り始めた。
「じゃあ、例えば誰が好みなんだ」
「ウチのクラスの藤野とか平山とか?」
「…じゃあ男はどうなんだ。ウチの部で。準太とか好きなのか」
「うん、好き」
慎吾はあっさりと認めた。仮にも恋人のオレの前で。
「じゃあ、利央は」
「アホっぽいけど好き」
「マサヤンとか」
「好き」
コイツは何なんだと思った。何の目的があってこんな事を言うのか。遠まわしにオレは好みじゃないといいたいのか。
「ちなみに前チンとか」
「うーん、ごめんなさいて感じ?あ、でも別に嫌いなわけじゃねーんだよ。好みの問題だから」
実はオレと別れたいのか。だから遠まわしにこんな発言をするのか。だったらひどいやりようだ。普通に、言えばいい。別れたいのだと。
そうして実際言われる所を想像して、とても悲しい気持ちになる。
隣を歩く慎吾は何も考えて無いように見える。最近は花粉が酷いとか、そんな単なる世間話をしているかのごとく。
「…じゃあ、オレはどうなんだ」
知らず知らず声が暗くなってしまったが仕方が無い。こいつが悪いのだ。
慎吾はうーんと少し考えてから「普通」と言った。
「じゃあ何でオレと付き合ってる」
「え?」
きょとんとした顔でこちらを見た。更に、オレの顔を見て驚いた。
「何だよ、何その顔。怖ぇ」
「いいから答えろ」
「好きだからだろ」
「でもお前はツラの良い奴が好きなんだろ」
「そりゃそうだけど。だから好みの問題なんだって。皆が皆、自分好みの外見の奴と付き合うとは限らないだろ?」
「でも準太が好きだって言っただろ」
「外見的に好きだっつーだけだよ。オレが付き合いたかったのはお前なの。そういう意味で好きなのもお前なんだよ」
何で分かんねーかな。オレ結構好きアピールしてんのに、なんて不服そうに呟く。
「じゃあ、何でこんな話題を出すんだよ」
「単なる世間話だろ?今週のグラビアはこの子が好きだ、程度の」
「お前のは身近な人間を対象にしてただろ。感じ悪いし性質も悪い」
「わーかったよ分かりました。オレが悪かったですー」
全く悪いとは思ってないようで、ふてくされる。
「頼むから、もう他の奴が好みだとか言うな」
「…あ?」
「別れ話でも切り出されるのかと思うだろ」
「はぁ?そんなわけないだろ」
馬鹿じゃないのかとでも言いたげだ。自分の言動には何もおかしなところは無いと思っているのか。
「例えばオレが準太が好みだって言ったらお前は腹が立つだろ」
「当たり前だろ!」
「それと同じ事だろ」
「違え!」
「あのな…」
呆れてものが言えない。
「オレは絶対浮気もしねーし、正直人生で一度も無かったぐらいの一途さでもってお前と付き合ってるだろ?そういうトコが違う」
「オレが浮気するっつーのか」
「そういうわけじゃねえけど」
「そうだろが。大体なんだ、自分に間違いは無いみたいな勝手な理論は」
「だって間違いねえもん。自身ある。オレすげぇ惚れてっから。お前が想像も出来ないぐらい」
「…あのなぁ」
馬鹿馬鹿しくなってきた。というより、慎吾の発言に深い意味は無いと分かったのだからもういいといえばいい話だった。
「お前はどうなんだよ。っつーかここで普通は、オレだってお前に惚れてる!お前以上に!とかいう所だろ」
先に行こうと歩みを速めた足を一旦止め、振りかえるとニヤついている慎吾がいた。
「なあ~、言えって~」
こうなるとコイツはしつこい。止めた足をさっさと進める。
「和己~、和己君~、何照れてんの~?」
ああ鬱陶しい。この愉快だといわんばかりの口調が最高に腹立たしい。黙れとよく回る口を塞いでやりたいところだが、こういう展開では勝てないのは経験が物語っていた。人をからかうことについてはとことん、長けた奴なのだった。
どうしてコイツを好きになってしまったんだろう、そんな事を思いながら、後ろを追いかけてくる慎吾を置き去りにするべく(それしか抵抗手段がない所が悲しい)、一層歩みを速めた。
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「オレ結構面食いっつーかさぁ。基本的に男も女も綺麗な子が好き」
いつも通りの帰り道、すっかり闇に包まれた町並みをささやかに電灯が辺りを照らす中で、唐突に慎吾は喋り始めた。
「じゃあ、例えば誰が好みなんだ」
「ウチのクラスの藤野とか平山とか?」
「…じゃあ男はどうなんだ。ウチの部で。準太とか好きなのか」
「うん、好き」
慎吾はあっさりと認めた。仮にも恋人のオレの前で。
「じゃあ、利央は」
「アホっぽいけど好き」
「マサヤンとか」
「好き」
コイツは何なんだと思った。何の目的があってこんな事を言うのか。遠まわしにオレは好みじゃないといいたいのか。
「ちなみに前チンとか」
「うーん、ごめんなさいて感じ?あ、でも別に嫌いなわけじゃねーんだよ。好みの問題だから」
実はオレと別れたいのか。だから遠まわしにこんな発言をするのか。だったらひどいやりようだ。普通に、言えばいい。別れたいのだと。
そうして実際言われる所を想像して、とても悲しい気持ちになる。
隣を歩く慎吾は何も考えて無いように見える。最近は花粉が酷いとか、そんな単なる世間話をしているかのごとく。
「…じゃあ、オレはどうなんだ」
知らず知らず声が暗くなってしまったが仕方が無い。こいつが悪いのだ。
慎吾はうーんと少し考えてから「普通」と言った。
「じゃあ何でオレと付き合ってる」
「え?」
きょとんとした顔でこちらを見た。更に、オレの顔を見て驚いた。
「何だよ、何その顔。怖ぇ」
「いいから答えろ」
「好きだからだろ」
「でもお前はツラの良い奴が好きなんだろ」
「そりゃそうだけど。だから好みの問題なんだって。皆が皆、自分好みの外見の奴と付き合うとは限らないだろ?」
「でも準太が好きだって言っただろ」
「外見的に好きだっつーだけだよ。オレが付き合いたかったのはお前なの。そういう意味で好きなのもお前なんだよ」
何で分かんねーかな。オレ結構好きアピールしてんのに、なんて不服そうに呟く。
「じゃあ、何でこんな話題を出すんだよ」
「単なる世間話だろ?今週のグラビアはこの子が好きだ、程度の」
「お前のは身近な人間を対象にしてただろ。感じ悪いし性質も悪い」
「わーかったよ分かりました。オレが悪かったですー」
全く悪いとは思ってないようで、ふてくされる。
「頼むから、もう他の奴が好みだとか言うな」
「…あ?」
「別れ話でも切り出されるのかと思うだろ」
「はぁ?そんなわけないだろ」
馬鹿じゃないのかとでも言いたげだ。自分の言動には何もおかしなところは無いと思っているのか。
「例えばオレが準太が好みだって言ったらお前は腹が立つだろ」
「当たり前だろ!」
「それと同じ事だろ」
「違え!」
「あのな…」
呆れてものが言えない。
「オレは絶対浮気もしねーし、正直人生で一度も無かったぐらいの一途さでもってお前と付き合ってるだろ?そういうトコが違う」
「オレが浮気するっつーのか」
「そういうわけじゃねえけど」
「そうだろが。大体なんだ、自分に間違いは無いみたいな勝手な理論は」
「だって間違いねえもん。自身ある。オレすげぇ惚れてっから。お前が想像も出来ないぐらい」
「…あのなぁ」
馬鹿馬鹿しくなってきた。というより、慎吾の発言に深い意味は無いと分かったのだからもういいといえばいい話だった。
「お前はどうなんだよ。っつーかここで普通は、オレだってお前に惚れてる!お前以上に!とかいう所だろ」
先に行こうと歩みを速めた足を一旦止め、振りかえるとニヤついている慎吾がいた。
「なあ~、言えって~」
こうなるとコイツはしつこい。止めた足をさっさと進める。
「和己~、和己君~、何照れてんの~?」
ああ鬱陶しい。この愉快だといわんばかりの口調が最高に腹立たしい。黙れとよく回る口を塞いでやりたいところだが、こういう展開では勝てないのは経験が物語っていた。人をからかうことについてはとことん、長けた奴なのだった。
どうしてコイツを好きになってしまったんだろう、そんな事を思いながら、後ろを追いかけてくる慎吾を置き去りにするべく(それしか抵抗手段がない所が悲しい)、一層歩みを速めた。
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