忍者ブログ
だらだらと。
| Admin | Res |
<< 05  2024/06  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30    07 >>
[429]  [428]  [427]  [426]  [425]  [424]  [423]  [422]  [421]  [420]  [419
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

-----
「オレ思うんだけどよ、」
と切り出したところで和己が立ち上がった。
「もう終わりだな、休憩。集合かけねえと」
「いや、その前にちょっと…」
少しぐらい延びた所で構わないだろうと本山は思うが、妙に真面目で融通の利かない和己は時計を確認し、集合と声を張り上げた。
仕方なく本山も腰を上げる。この話は練習後になってしまうらしかった。

だが、一緒に帰ろうと考えていたにも関わらず、和己は慎吾と共に部誌を書き上げるとさっさと帰ってしまった。
一筋の光明を悩める主将に与えようと考えていたのにと、肩透かしを食らった形だった。

そして翌日、四時限目の終了の鐘が鳴り終り、先生がようやく授業を終えると本山は即座に教科書を机に突っ込み、弁当を持って教室を出た。
思えば、和己からあんなプライベートな相談事を受けるのは初めてだった。自分に話してくれたのだから、ここは力になってやりたい。そんな思い半分、好奇心半分で昨日からウズウズしていたのだった。

教室にいる和己を見つけると、名を呼び、手招きをする。と同時に、教室内にいる女生徒に目を走らせる。和己を困らせているのは一体どんな女なのだろうかと。
「なんだよ、珍しいな」
「昨日の話、途中になってたろ。一緒にメシ食おうぜ」
「それでわざわざ来たのか」
少し呆れたように言うが、途中で中断された方はたまった物ではなかった。
「つかさ、今いんの?彼女」
キョロキョロとクラスを眺める本山に「いない」と短く返し、和己は自分の弁当を取り、戻ってきた。
「どこで食うんだ」
「屋上」
「この暑いのにか」
「こういう話は屋上が定番でしょ~」
面白がられているようで、何だか少し引っかかるものを感じるものの、共に、すぐ近くにある屋上への階段を上っていった。

扉を開けるとそこは炎天下、日がさした途端に肌を焼かれるような感覚さえある。すぐに日陰に入ったものの、気温の高さは大して違わないように思われた。
二人で腰を下ろし、弁当の蓋を開ける。これだけ暑いと、悪くなっているオカズが無いか心配になってくる。
「そんで、昨日聞きたかった事なんだけどさ」
ウインナーを一つ頬張ると、ロクに租借もしないまま早速のように語り掛ける。
「お前らってどういう雰囲気なの?なんつーか、二人でいる時さ、ラブラブとか、そうじゃないとか」
和己はまず水筒のお茶を一杯飲み干した。氷を沢山入れて持ってきたお茶は、今日もまだまだ冷えていて、少し幸せになる。
「普通かな。…それまで友達やってて、そん時とあんまり雰囲気変わってねえ。でもオレからしたら、楽しいんだよ。やっぱり付き合ってるっていう前提があるだろ?だから一緒にいるだけでも、嬉しいし。…向こうも、そう見えたんだけど」
「でもさ、やっぱ彼氏彼女なわけだろ?こう、いい雰囲気になる時とかさ、あるだろ」
すると和己は、少し躊躇いながらも口を開いた。
「この間、な、キス、した」
「へぇ~、…つかいつから付き合いだしたんだよ、そもそも」
「4月半ばぐらいだから…四ヶ月ぐらいか?」
するとその答えに本山が素っ頓狂な声を上げた。
「四ヶ月?つか、四ヶ月付き合ってて、やっとキス?」
「遅いか?やっぱ…」
「そりゃそうだろ!どんだけ奥手なんだよ。もっと押してけよ!」
「でも、嫌がられるかもしれないと思うと怖くて」
「何でそんな消極的なんだよ。付き合ってんだろーが!告ってOKされたんだろーが!」
もはや本山の箸は完全に止まっており、弁当箱のおかずはウインナー一つが消化されたのみだった。
「でもな、ホントはOK貰ったのだって信じられないぐらいだったんだよ。拍子抜けするぐらい、”いーよ”って、あっさり言われて。だからもうどうしていいか分からなくて。それに、しつこいタイプとか嫌う奴なんだ。浮気を問い詰めたら逃げ出しそうな」
和己の箸も、同様に止まっていた。本山は大きく溜息を吐く。普段はあんなに頼もしい男が、こと恋愛に対してこれ程臆病で情けないのはどうしてなのだろうかと。それが恋のなせる業なのか、それともよっぽど手に負えない相手なのか。
「あのな、浮気する彼女もどうかと思うけど、半分はお前が悪いよ」
そしてそう断じた。
「これまで色んな男と付き合ってきたような女がさ、四ヶ月でようやくキスとかそんな奴に満足できると思うか?多分モテるんだろうし、それなのにその調子じゃ好きアピールだってまともにしてねーんだろ」
「……」
図星を突かれたように、和己は目を逸らす。
「どんな女だってな、好きって言われたら嬉しいもんだよ。寧ろ、それで自分の価値を計ってるとこだってあっからな。なのに付き合った男は友人時代と大して変わらない態度じゃ、嫌になるだろ。そんなに好きじゃなかったの?ってよ。腹いせに浮気でもしてやろうかしら、ってな」
すると和己はバッと本山を振り返った。
「そうなのか?腹いせなのか?浮気は」
必死の形相に、落ち着け、と促す。
「可能性の一つだよ。あくまで。でもそれが事実なら逆に彼女はお前の事は結構好きって結論が出るだろ」
「…そうか…」
「それにさ、同じクラスの奴とばっかってのも、引っかかったんだよな。普通そこは避けるだろ。相手と気まずくなんだろ。だけど、そこは敢えて、って事かもしんねーなと思ったんだよ」
「わざとって事か?見せ付けるために」
本山の出した一つの結論に縋るように和己は問いかける。そうであって欲しいという思いが、嫌でも伝わってくる。
「断定は出来ねーぞ。だけど、お前はまずやるべき事があるだろ。彼女にちゃんと伝えるんだよ。好きで好きでしょうがないってよ。もっと積極的になんだよ」
「そう…そうだな」
言い聞かせるように呟く和己を見て、本山は自分が役に立ったと満足した。吉と出るか凶と出るかは分からないが、男の取るべき行動を示したのだ。

部活が終わり、今日も和己は慎吾とさっさと部室を後にした。扉の向こうに消えていった背中を眺めつつ、野球部でさえなかったら、本当は彼女と下校だって出来るのだろうになと思う。
しかしそこでふと思った。何故和己はオレに相談したのだろう。もっと恋愛事に適した奴が、ごく身近にいるのだ。
どこか引っかかるものを感じつつも、大事な事は片付きそうなのだからいいか、と本山は適当にネクタイを締めたのだった。
-----

慎吾が全然出てきませんが、一区切りです。ちょっと和さんと慎吾も書くかも、です。
しっかし文章って難しいですね。昨日の文章を読み返して小学生レベルじゃないのかと、大丈夫なのかと不安になりました。

でも拍手有難うございました!
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
Mail
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ表示(チェックを入れると管理人だけに表示できます)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
浮気慎吾3     HOME     浮気慎吾
カレンダー
05 2024/06 07
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析

Powered by Ninja Blog    Material by mococo    Template by Temp* factory
Copyright (c)3足のワラジ All Rights Reserved.


忍者ブログ [PR]