だらだらと。
-----
「っごめん!マジで!」
二人きりの部室で、慎吾が両手を拝むように合わせ、和己に謝罪する。
「……」
「もうしねえから」
「…前にも、そう言っただろ」
「言ったけど…、マジでやんねえし。今度はホントに」
ちらりと和己の表情を伺うと、眉を潜めながらも「…わかった」と呟いた。
それでようやく慎吾は安堵し、共に帰途に着くのだった。
「なぁ…モトやん、ちょっと聞きたいんだけどよ」
「ん?何」
部活中の休憩で、たまたま木陰で二人になった本山に、グラウンドを眺めつつ和己は訊ねる。今日も練習はいつも通りハードで、いつも通りの猛暑だ。タオルで拭ったにも関わらず、顔から汗が噴出す。
「付き合ってる奴がいるのに二回も浮気するのって何でだと思う?しかも短期間に」
「え、何それ。浮気されてんの?つか彼女いたのかよ」
「やっぱ、実は好きじゃねえって事なのかな」
和己は無表情のまま、遠いところを眺めたままで問いかける。
「好きじゃねえかどうかは知らないけどよ、ナメられてんじゃね?つか相手どんな子よ。結構派手な感じ?遊んでそうな」
手に持ったペットボトルのキャップを外し、本山は一気に清涼飲料水を飲み干す。冷えた液体が、体中に染み渡っていくような気がする。練習途中で飲む飲み物は何よりも美味しい。
「普通だと思うけど…でも結構沢山と付き合ってたな。寧ろ、どうしてオレと付き合ってくれたのか今でも分からないんだ」
全てを飲み終え、ぷはっ、と唇をペットボトルから離した。
「じゃあアレだ、お前なら浮気も許してくれるとかタカ括ってんじゃねーの」
「そうかな」
「そーだって!ガツンと言ってやれよ!今度やったら別れるとか」
「別れるのは嫌だ…」
情けなく項垂れる和己は、いつもより身体が小さく見えるような気さえした。
「情けねー事言ってんなよ!そんなだからナメてかかんだって!つーか相手誰だよ。ムカつくなおい!」
「…怖いんだ」
「はぁ?」
「問い詰めたりしたら、もういい、別れよう、とかあっさり言われそうで」
「何弱気になってんだよ。どんないい女かしんねーけど、お前だっていい男だし、そんなやつこっちから振っちまえっつーの!」
いつのまにか本山の方が熱くなっていた。これまで和己のこんな姿を見た事は無かったし、こんな姿を見たくは無かった。出来る事なら自分が変わってその女を問い詰めてやりたい程だった。
「浮気相手ってさ、同じクラスの奴なんだ。二人とも」
「何それ!何がしてえんだよそいつ!ありえねえだろ」
「ありえねえかな。でもいい奴なんだよ。それは知ってんだ、最初から」
始終一本調子で和己は返してくる。和己がこんな調子だから、自分は余計にムキになってしまうのかもしれないと本山は思う。
「ありえねえよ!なんだよ、浮気する奴が良い奴かよ」
しかしそこでふと考える。和己言い分によると相手は、良い奴だが短期間に二回も浮気をした。しかも同じクラスの奴と。一見とんでもないことで、実際にそうなのだが。
「なぁ、その子ってさ、前から浮気癖あったの」
「…いや、ねえな。多分、知ってる限りでは二股なんて無かったと思う」
そこで和己はいよいよ落ち込んだ。情けない自分に自己嫌悪が増したのか。
「なぁ…仮説だけどさ」
そこで本山は語りだした。自信も根拠も無い話だが、少しの可能性でも提示しておきたいと思った。休憩時間はもうすぐ終わってしまう。この寂しい我がチームの主将を、元気に練習へと戻らせてやりたいところだった。
分の悪い賭けだったが。
-----
続きます
>昨日合同本のお問合せくださったS.Y様(イニシャル合ってますかね…?)
自家通販に付いて、了解いたしました!2冊OKです。15日過ぎた辺りにメールさせて頂きますね。
「っごめん!マジで!」
二人きりの部室で、慎吾が両手を拝むように合わせ、和己に謝罪する。
「……」
「もうしねえから」
「…前にも、そう言っただろ」
「言ったけど…、マジでやんねえし。今度はホントに」
ちらりと和己の表情を伺うと、眉を潜めながらも「…わかった」と呟いた。
それでようやく慎吾は安堵し、共に帰途に着くのだった。
「なぁ…モトやん、ちょっと聞きたいんだけどよ」
「ん?何」
部活中の休憩で、たまたま木陰で二人になった本山に、グラウンドを眺めつつ和己は訊ねる。今日も練習はいつも通りハードで、いつも通りの猛暑だ。タオルで拭ったにも関わらず、顔から汗が噴出す。
「付き合ってる奴がいるのに二回も浮気するのって何でだと思う?しかも短期間に」
「え、何それ。浮気されてんの?つか彼女いたのかよ」
「やっぱ、実は好きじゃねえって事なのかな」
和己は無表情のまま、遠いところを眺めたままで問いかける。
「好きじゃねえかどうかは知らないけどよ、ナメられてんじゃね?つか相手どんな子よ。結構派手な感じ?遊んでそうな」
手に持ったペットボトルのキャップを外し、本山は一気に清涼飲料水を飲み干す。冷えた液体が、体中に染み渡っていくような気がする。練習途中で飲む飲み物は何よりも美味しい。
「普通だと思うけど…でも結構沢山と付き合ってたな。寧ろ、どうしてオレと付き合ってくれたのか今でも分からないんだ」
全てを飲み終え、ぷはっ、と唇をペットボトルから離した。
「じゃあアレだ、お前なら浮気も許してくれるとかタカ括ってんじゃねーの」
「そうかな」
「そーだって!ガツンと言ってやれよ!今度やったら別れるとか」
「別れるのは嫌だ…」
情けなく項垂れる和己は、いつもより身体が小さく見えるような気さえした。
「情けねー事言ってんなよ!そんなだからナメてかかんだって!つーか相手誰だよ。ムカつくなおい!」
「…怖いんだ」
「はぁ?」
「問い詰めたりしたら、もういい、別れよう、とかあっさり言われそうで」
「何弱気になってんだよ。どんないい女かしんねーけど、お前だっていい男だし、そんなやつこっちから振っちまえっつーの!」
いつのまにか本山の方が熱くなっていた。これまで和己のこんな姿を見た事は無かったし、こんな姿を見たくは無かった。出来る事なら自分が変わってその女を問い詰めてやりたい程だった。
「浮気相手ってさ、同じクラスの奴なんだ。二人とも」
「何それ!何がしてえんだよそいつ!ありえねえだろ」
「ありえねえかな。でもいい奴なんだよ。それは知ってんだ、最初から」
始終一本調子で和己は返してくる。和己がこんな調子だから、自分は余計にムキになってしまうのかもしれないと本山は思う。
「ありえねえよ!なんだよ、浮気する奴が良い奴かよ」
しかしそこでふと考える。和己言い分によると相手は、良い奴だが短期間に二回も浮気をした。しかも同じクラスの奴と。一見とんでもないことで、実際にそうなのだが。
「なぁ、その子ってさ、前から浮気癖あったの」
「…いや、ねえな。多分、知ってる限りでは二股なんて無かったと思う」
そこで和己はいよいよ落ち込んだ。情けない自分に自己嫌悪が増したのか。
「なぁ…仮説だけどさ」
そこで本山は語りだした。自信も根拠も無い話だが、少しの可能性でも提示しておきたいと思った。休憩時間はもうすぐ終わってしまう。この寂しい我がチームの主将を、元気に練習へと戻らせてやりたいところだった。
分の悪い賭けだったが。
-----
続きます
>昨日合同本のお問合せくださったS.Y様(イニシャル合ってますかね…?)
自家通販に付いて、了解いたしました!2冊OKです。15日過ぎた辺りにメールさせて頂きますね。
PR
この記事にコメントする