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だらだらと。
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 時刻は既に、十一時を回った頃でした。島崎組の組員、下総組の組長と幹部数人が息を詰めて報告を待つ中、一吾の携帯が鳴りました。
「もしもし」
『あ、オレオレ」
「慎吾か?!」
『うんそう、慎吾』
およそ二時間に渡った緊張感に似つかわしくない慎吾ののんびりとした声が、通話口から聞こえてきます。どうも事態は思ったほどの事では無かったようだと一吾は判断しますが、腹の虫は収まりません。
「テメェ今どこにいやがんだ、あ?事と次第によっちゃただじゃすまねえぞコラ」
『いや、色々あったんだって。それでさ、今からタクシーで戻るから。明君と一緒に。え~っと大体…ん?あ、三十分ぐらい?えっと三十分ぐらいで戻るわ。じゃ』
「待てコラ!」
しかしあっさりと通話は切られてしまいました。

 慎吾はそれからきっかり三十分して、下総組の長男と共にタクシーで帰ってきました。和己達の心配もどこ吹く風といった、のほほんとした緊張感の無い顔で「ただいま」などと言う始末です。一吾に詰め寄られると「お騒がせして済みませんした」と一応の謝罪はしたものの、いまいち誠意が感じられず、和己は釈然としません。慎吾が視線を投げてきましたが、それを睨みつけて返したのでした。緊張と不安に包まれた時間を返せと言ってやりたい気分でした。
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「あの~、明さん?」
「あ、なんスか」
「そろそろ帰りませんか。多分、騒ぎになってますけど」
「ですよね」
「下手すっと、お互いの組に亀裂が入りかねないっつーか。いやもうちょっと入っちゃってっかも」
「ですよね…。てか慎吾さん、帰ったら良いじゃないですか。別に縛ってるわけじゃないし、鍵も開いてるし、いつでも逃げられるじゃないスか」
「いやまあ、そうなんですけど。オレ一人で帰るより、二人で帰った方が事も穏やかに済むかなって」
「そうっすよね…すんません、何か気ィ使ってもらっちゃって」
「いやいーんスけど。つか減りましたね、腹」
「あ、もうすぐピザ届くんで…」
「じゃ、食ったら帰ります?」
「そうっすね」
「てか、この部屋って個人で借りてるんすか?」
「あー、ちょっと前まで彼女と住んでたんスけど、何か逃げられちゃって。最近借りたばっかだったんすよ。だから組の連中も知らないし。でも何が気に入らなかったのか全然分かんないんですよねー。何すかね、女って何考えてんのか分かんねっス」
「あー、まぁそうですね。あ、ピザ来たんじゃないですか?」
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「この度は、ウチの馬鹿がとんでも無い事を…」
ほんの十日前に会った時に見た、あの大らかで鷹揚な気配は影を薄め、険しい表情のまま、下総組組長は一吾に頭を下げました。
「まだ何も分かっていません。まさか二人で心中したわけでもないでしょうから、その内帰って来るでしょう。ウチとしても古い付き合いのあるそちらさんと事を大きくしたくはありません。今も二人を探させてますから、全ては事態が収集した上で考えましょう。ところで」
「はい」
ばっ、と組長が顔を上げます。
「貴方の息子さんは、慎吾と二人で話したがっていたようですが、心当たりはありますか」
「それが…正直、どうしてなのか。確かに、島崎組を羨むような事は言っていましたが、何故弟さんなのかは」
「ウチを?」
「…えぇ、組を縮小されても未だ変わらぬ影響力を持っている…、更にとてもその、潤っているようだなどと。今や、どこの組も苦しいこの時勢に」
「なるほど」
 島崎組を妬むような材料はあったようです。という事は、慎吾を恐らく脅したのもその辺についての事なのでしょうか。ただ、危害を加えるような程の事とも思えませんでした。和己は少し安堵し、しかし真相はまだはっきりしないのだと、緊張感を維持し、状況を見守るのでした。
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>ネットをふらふらしていたら、銀/魂の近受サーチを発見してしまって嬉しかったりしました。てっきりそんな傾向はゼロなのかと思ってましたよ。
でも愛されてるじゃないですか、隊士に。超。特に二名に。
いいなぁ…。
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 慎吾が行方不明だと知った最初こそ驚き、うろたえた和己でしたが、暫くして冷静にならなければと心を落ち着けました。焦ったところでどうにもならないのです。
 和己は考えます。偶然街で出会ったという事から、恐らく計画的な行動ではないと。慎吾と共に消えていたというのも、普通のカフェでの話ですから、暴力的な行動には向こうは出ていないはずです。だとすると慎吾は同意の下で付いていった事になります。では何故付いていかなければならなかったのか。何か言葉で脅される材料があったのでしょうか。ばらされて困ると言えば、何かの秘密事ですが、これについては分かりません。ヤクザの世界に付いては分からないことがまだ沢山ありますし、島崎組、下総組、両方の関係についても、悪くない付き合いがあるぐらいの知識しかありません。そして下総組といえば、組長が一吾を引き合いに出し”うちの馬鹿息子に比べたら雲泥の差だ”と言っていた事が思い出されます。それが事実だとすれば、考えなしに組長の息子が引き起こした騒動、という結論に辿り着くのでした。
 しかし、慎吾は無事なのか、何処にいるのか、といった重要な事柄については何も分からないままです。おとなしく下総組組長が来るのを待つしかないようでした。
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 それから三日後、事件は起きました。

「説明しろ」
 苛立たしさを隠そうともせず、一吾が木下に言い放ちます。組の人間が十人ほど集められた部屋に、和己もいました。
「…街で、本当に偶然、下総組の長男坊と出くわしたんです。向こうが声をかけてきて、暫く慎吾さんと二人で話をしたいと」
九十度に腰を折ったまま話し始める木下は顔色を失っていました。
「どうしてだ。慎吾と面識なんて殆ど無えだろ」
「はい。恐らく一、二回、どこかで顔を合わせたぐらいだと。しかし向こうは覚えていたようで。妙にしつこい様子だったので目立つのも嫌だと思ったのか、慎吾さんは言う通りに近くのカフェに入ったんです。向こうの連れも、私も暫く表で待っていろと」
 しかし三十分経っても二人は出て来ず、様子を伺いに店内に入った所、姿が無かったという。向こうの舎弟二人も慌てた様子で携帯を鳴らしたようだったが繋がらず、慎吾の方も同様だったと言います。そして今になっても、連絡は取れないままでした。二人を見失ってから既に、四時間が経過している事になります。
「何故気付かなかった」
木下の額にはうっすら汗が滲んでいました。側に付いていながら見失い、もしも慎吾の身に何かあったとなれば、ただでは済みません。ケジメを取るのがこの世界の常識でした。
「通りに面していたカフェだったのですが、出口が路地側にもう一つあり、そこから出たのだと」
「一吾さん、どうします」
一吾の一番古株である舎弟の一人が、声をかけます。
「親父にはまだ言わない方がいいだろう。もう一度近辺を探せ。…それから下総に連絡を入れる」
携帯を取り出し、いくつかボタンを押すと、耳に当てます。と、その時一人の組員が足早に部屋に入ってきました。
「下総組組長が直々に、今、来られてます」
携帯をパタンと閉じると、「すぐに通せ」と短く言い捨てました。
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