だらだらと。
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「和己、一緒に来い」
あれから一週間後の日曜日、今度は一吾に誘われました。誘われたとは言っても、舎弟としての仕事の一環です。言われるがまま、黒塗りの高級車の後部座席に一吾と共に乗り込みます。唐突で、一体何処に向かうのかと問うと、島崎組傘下の組の一つだという答えが返ってきました。
「先代の三回忌だ。今じゃウチ関係では一番古い組だからな。こういう冠婚葬祭は大事な行事なんだ」
そんな行事に下っ端の自分などが言っていいのだろうかと不安に思うものの、それよりも身に着けている衣服がごくラフな格好である事に焦ります。気がつけば運転席と助手席の人間も、そして一吾もビシっと喪服で決めているのでした。
「スーツは途中で買ってやる」
戸惑いつつも、頭を下げて礼を言う事は忘れません。
立ち寄ったスーツ店は明らかに敷居が高そうで落ち着かない和己でしたが、あれよあれよという間に採寸され、その場で丈を合わせたスーツを手渡され、そのまま試着室で身に着けると、すぐに車は発進しました。和己は改めて恐縮しつつも例を言います。
「慎吾の機嫌はどうだ」
「え?」
「メシの時にグダグダ煩かったんだ。直ったか」
「は、はい…」
どういう顔をしていいやら分からず、助手席のシートを見つめて固まったまま答えます。
「仕事は。会社と組と、慣れたか」
「…まだまだ、至らないですが。何とか」
「三ヶ月足らずじゃなぁ。でもまぁ、大変だろ。会社員と組員の二足のワラジだからな」
「…一吾さんは、今は組だけなんですか?」
物を訊ねるのにも気を使います。野球部での上下関係を思い出しますが、それよりも更に緊張感を強いられているのは確かです。
「まあな。ただ最近は勉強させられてはいるから、会社に関してはお前らのが先輩だ」
勉強と考えて思い出すのは、かつて慎吾についていたというオカマ家庭教師でした。一吾もやはり同様なのかと考える一方で、島崎組と島崎ホールディングスの両立について考えます。
車はやがて大きな屋敷の前に着きました。ドアを和己が開けると、一吾が降り立ちます。屋敷は島崎組程ではないものの、立派な日本家屋でした。屋敷の周りには既に到着している車がぐるりと囲むように何台も停まっていました。更に門をくぐり、家屋に入り、大きな広間へ通されるとそこにはコワモテの人間が何十人も所狭しと座っていました。さすがに緊張しない訳がありません。自然に表情がこわばる和己に、「別に何もする事はねえからただ座ってろ。直終わる」と一吾が声をかけるのでした。
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「和己、一緒に来い」
あれから一週間後の日曜日、今度は一吾に誘われました。誘われたとは言っても、舎弟としての仕事の一環です。言われるがまま、黒塗りの高級車の後部座席に一吾と共に乗り込みます。唐突で、一体何処に向かうのかと問うと、島崎組傘下の組の一つだという答えが返ってきました。
「先代の三回忌だ。今じゃウチ関係では一番古い組だからな。こういう冠婚葬祭は大事な行事なんだ」
そんな行事に下っ端の自分などが言っていいのだろうかと不安に思うものの、それよりも身に着けている衣服がごくラフな格好である事に焦ります。気がつけば運転席と助手席の人間も、そして一吾もビシっと喪服で決めているのでした。
「スーツは途中で買ってやる」
戸惑いつつも、頭を下げて礼を言う事は忘れません。
立ち寄ったスーツ店は明らかに敷居が高そうで落ち着かない和己でしたが、あれよあれよという間に採寸され、その場で丈を合わせたスーツを手渡され、そのまま試着室で身に着けると、すぐに車は発進しました。和己は改めて恐縮しつつも例を言います。
「慎吾の機嫌はどうだ」
「え?」
「メシの時にグダグダ煩かったんだ。直ったか」
「は、はい…」
どういう顔をしていいやら分からず、助手席のシートを見つめて固まったまま答えます。
「仕事は。会社と組と、慣れたか」
「…まだまだ、至らないですが。何とか」
「三ヶ月足らずじゃなぁ。でもまぁ、大変だろ。会社員と組員の二足のワラジだからな」
「…一吾さんは、今は組だけなんですか?」
物を訊ねるのにも気を使います。野球部での上下関係を思い出しますが、それよりも更に緊張感を強いられているのは確かです。
「まあな。ただ最近は勉強させられてはいるから、会社に関してはお前らのが先輩だ」
勉強と考えて思い出すのは、かつて慎吾についていたというオカマ家庭教師でした。一吾もやはり同様なのかと考える一方で、島崎組と島崎ホールディングスの両立について考えます。
車はやがて大きな屋敷の前に着きました。ドアを和己が開けると、一吾が降り立ちます。屋敷は島崎組程ではないものの、立派な日本家屋でした。屋敷の周りには既に到着している車がぐるりと囲むように何台も停まっていました。更に門をくぐり、家屋に入り、大きな広間へ通されるとそこにはコワモテの人間が何十人も所狭しと座っていました。さすがに緊張しない訳がありません。自然に表情がこわばる和己に、「別に何もする事はねえからただ座ってろ。直終わる」と一吾が声をかけるのでした。
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