だらだらと。
----------------------------------------------------
和己が組に入ってから三年目を迎え、季節は梅雨に入っていました。山ノ井ショックからは三ヶ月程が過ぎ、戦々恐々としていた慎吾と和己はようやく、山ノ井に本当に悪意は無かったらしいと気を緩めることが出来つつあったのでした。
和己は二十五、慎吾は二十四になっていました。相変わらず仕事と組員との両立をこなす和己は、慌しい日常を過ごしていました。
そんなある日、和己は一吾に呼び出されたのでした。土曜だったのでいつものように掃除に勤しんでいた和己は、回る洗濯物を確認してから、一吾の部屋へと赴いたのでした。
「遅くなって悪かったんだが、奉公明けだ。ご苦労だったな」
突然切り出された話に戸惑いを隠せません。呆然としつつも聞き返します。
「…と、言うのは…」
「よく頑張ってくれた。本当は二年が区切りなんだか、ここの所忙しくてな。遅くなっちまった。もう、屋敷の事はしなくていい」
すっかり、下っ端仕事を組に所属する限りずっとしていなければいけないのかと思っていたので、驚きを隠せません。
「もう屋敷内にいる事も無い。自由にしていいぞ。昔なら自分の事務所を持つなりしろって言う所だがな。そんな気も無いだろ」
「それは、そうですけど」
急な展開に頭がついていきませんでした。
「それと、これを取っておけ」
何やら分厚い封筒を渡されます。条件反射で受け取り、中を確認すると、福沢諭吉が目に飛び込んできました。
「本来なら二百万ぐらい渡してやるとこなんだがな、お前は週二の奉公だったから、四分の一にしてもらった。まぁ、給料だって貰ってるんだから困らないだろ」
和己は、気の抜けたような声で「はぁ」と返事をし、しかし大事なのはそこではない、と辛うじて考えたのでした。
「あの。オレは、屋敷を出て行かないといけないんでしょうか」
「そりゃお前の自由だ。出て行く奴が多いが、居残る奴も居る。けどお前もあんな寒くて狭い部屋にずっといたくないだろ。屋敷には、やっぱり残りたいか?」
少し悪戯っぽい顔で聞いてきます。それは勿論、慎吾の存在があるからです。
「はい、置いて頂けるなら」
「なら勝手にしろ。これまでみたいに掃除しろとは言わないが、ただ何かと手伝ってもらう事はあるぞ。部屋はもうちょっとマシな所に移れ。言っといてやるから」
「有難うございます」
というわけで、和己は突然、組の奉公から開放されたのでした。
----------------------------------------------------
とりあえず再開しました。また読んで頂けましたら幸いです。
文量的には100はあっさり超えてしまいそうです。
なるべくまとめたいですが。
和己が組に入ってから三年目を迎え、季節は梅雨に入っていました。山ノ井ショックからは三ヶ月程が過ぎ、戦々恐々としていた慎吾と和己はようやく、山ノ井に本当に悪意は無かったらしいと気を緩めることが出来つつあったのでした。
和己は二十五、慎吾は二十四になっていました。相変わらず仕事と組員との両立をこなす和己は、慌しい日常を過ごしていました。
そんなある日、和己は一吾に呼び出されたのでした。土曜だったのでいつものように掃除に勤しんでいた和己は、回る洗濯物を確認してから、一吾の部屋へと赴いたのでした。
「遅くなって悪かったんだが、奉公明けだ。ご苦労だったな」
突然切り出された話に戸惑いを隠せません。呆然としつつも聞き返します。
「…と、言うのは…」
「よく頑張ってくれた。本当は二年が区切りなんだか、ここの所忙しくてな。遅くなっちまった。もう、屋敷の事はしなくていい」
すっかり、下っ端仕事を組に所属する限りずっとしていなければいけないのかと思っていたので、驚きを隠せません。
「もう屋敷内にいる事も無い。自由にしていいぞ。昔なら自分の事務所を持つなりしろって言う所だがな。そんな気も無いだろ」
「それは、そうですけど」
急な展開に頭がついていきませんでした。
「それと、これを取っておけ」
何やら分厚い封筒を渡されます。条件反射で受け取り、中を確認すると、福沢諭吉が目に飛び込んできました。
「本来なら二百万ぐらい渡してやるとこなんだがな、お前は週二の奉公だったから、四分の一にしてもらった。まぁ、給料だって貰ってるんだから困らないだろ」
和己は、気の抜けたような声で「はぁ」と返事をし、しかし大事なのはそこではない、と辛うじて考えたのでした。
「あの。オレは、屋敷を出て行かないといけないんでしょうか」
「そりゃお前の自由だ。出て行く奴が多いが、居残る奴も居る。けどお前もあんな寒くて狭い部屋にずっといたくないだろ。屋敷には、やっぱり残りたいか?」
少し悪戯っぽい顔で聞いてきます。それは勿論、慎吾の存在があるからです。
「はい、置いて頂けるなら」
「なら勝手にしろ。これまでみたいに掃除しろとは言わないが、ただ何かと手伝ってもらう事はあるぞ。部屋はもうちょっとマシな所に移れ。言っといてやるから」
「有難うございます」
というわけで、和己は突然、組の奉公から開放されたのでした。
----------------------------------------------------
とりあえず再開しました。また読んで頂けましたら幸いです。
文量的には100はあっさり超えてしまいそうです。
なるべくまとめたいですが。
PR
この記事にコメントする