だらだらと。
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「会ってないけど。山ちゃんは会ったらしいな」
「そうそう。元気そうだったけど、なんか距離感感じた。でも話してくウチに打ち解けたかな。やっぱ高校の三年間ってのは濃い時間だもんな。学生の時に時間が戻った感じだった。色々話しててさ、やっぱ良いなって思ったよ」
「どんな事話したんだ」
「色々」
その色々が聞きたいのだと、その為にわざわざ出向いたのだと、和己ははやる気持ちを抑えて先を促します。
「例えば?」
間を置いて唐突に山ノ井は言いました。
「慎吾って可愛くない?」
どういう意味なんだ、と問い詰めたくなります。
「ガードが固くて愛想も良い人間の、本当の中身を見るのって楽しいよね」
表現がどうにも抽象的でした。
「慎吾って結構、可愛いと思う。ていうか可愛かった。普段違うんだけど、ていうかそう見えるんだけど、意外と中身は繊細」
ぱくり、とようやく眺めるだけだったニンジンを食べました。
「話してて思った。高校ん時もちらっと垣間見えてたんだけど、それが会った時により見えた。しかもお互いの立場的にドラマチックだったからさ、慎吾が女だったら惚れてたね。つか何としてでも付き合ってたと思う」
嫌な予感が大当たりしたようで、内心舌打ちしたい気分でした。
「質問の答えになってないんじゃないか?」
「まぁ、そこは守秘義務みたいな?詳しくは慎吾に直接聞いてよ」
今度はコーンスープが運ばれてきました。ハンバーグステーキよりも後に運ばれてくるのは何でだろう、早く出来そうなのに。などと言いながら熱いスープを飲み始めます。
「女だったら有り、って事は当然男だから無いんだよな。一応聞くけど」
啜っていたスープ皿から顔を上げます。
「どう思う?」
「どう思うって何だ」
ついうろたえます。
「男だから無しだと思う?和己は」
「何でオレに聞くんだ。自分の事だろ」
可能性として有りえると言いたいのでしょうか。冗談じゃないと、段々我慢の糸がプツプツ切れていくような気がしました。
「わかんないから聞いてみた。ていうか和己はどうなの。彼女いるの」
「いねぇよ」
ぽんぽんと変わる話題に、何より慎吾への好意を示唆する言葉に、苛立ちが混じります。
「そうなんだ。作らないの」
「良いだろ、どうでも」
この対応はまるで良くない、理性的な部分でそうは思っていても、もはや山ノ井と渡り合って会話する気力もやる気もあまり残ってはいませんでした。
そしてテーブルにはサラダが到着しました。この順番てどうなんだろう、間違ってるよね、と一人呟き、サラダを食べ始めます。
「よく食うな」
まるで野球部に所属していた時のように、次々と食事を平らげていく様子に感想を漏らします。
「ストレス堪ってるから。食べ物でちょっと解消?タバコも吸わないしさ。…そういう和己は食べないね。デカイのに」
「腹減ってねえんだ」
「でもちょっと太った?ていうか肉付き良い気がする。触って良い?」
そう言うと立ち上がり、身を屈めておもむろに肩や二の腕、果ては胸の辺りを触りました。
「硬いじゃん。筋肉?筋肉付くような仕事じゃないよねえ」
ギクリとします。筋肉の元は、土日のハードな床拭きや、炊事洗濯から作られたものでした。
「ちょっと鍛えてるんだ。運動不足になるから」
「ふうん」
そこで、初めて回っていた口を止めました。和己をじっと見つめます。
「同期に、同じぐらい筋肉質な奴いたよ。何段だったかな。とにかく強くて学校の大会で優勝してた。和己も余程鍛えてんだ。筋トレ?」
「…まあな」
この山ちゃんは駄目だ、まるで事情聴取でもされているようだと和己は思いました。慎吾の言っていた”会わない方がいい”の意味も分かった気がしました。
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この辺で書き溜めたストックが終わりそうです。
そろそろ区切りかと。
>大学生になると共に家を出た弟の部屋を、個人的事情で掃除し始めたのですが。
何せ十年以上時が止まったままの部屋なので、凄いのが色々と出てきました。
中学時代(?)の柔道着とか。どっかの土産物が沢山とか。謎のラクガキとか。
そのラクガキがシュール過ぎてページをずっと捲る事が出来ませんでした。
勝手に漁ってゴメンネ、て感じではあるんですが、万が一帰ってきても片付けやしないので、明日にでも連絡を取って不用品を処分していきたいと思ってます。
「会ってないけど。山ちゃんは会ったらしいな」
「そうそう。元気そうだったけど、なんか距離感感じた。でも話してくウチに打ち解けたかな。やっぱ高校の三年間ってのは濃い時間だもんな。学生の時に時間が戻った感じだった。色々話しててさ、やっぱ良いなって思ったよ」
「どんな事話したんだ」
「色々」
その色々が聞きたいのだと、その為にわざわざ出向いたのだと、和己ははやる気持ちを抑えて先を促します。
「例えば?」
間を置いて唐突に山ノ井は言いました。
「慎吾って可愛くない?」
どういう意味なんだ、と問い詰めたくなります。
「ガードが固くて愛想も良い人間の、本当の中身を見るのって楽しいよね」
表現がどうにも抽象的でした。
「慎吾って結構、可愛いと思う。ていうか可愛かった。普段違うんだけど、ていうかそう見えるんだけど、意外と中身は繊細」
ぱくり、とようやく眺めるだけだったニンジンを食べました。
「話してて思った。高校ん時もちらっと垣間見えてたんだけど、それが会った時により見えた。しかもお互いの立場的にドラマチックだったからさ、慎吾が女だったら惚れてたね。つか何としてでも付き合ってたと思う」
嫌な予感が大当たりしたようで、内心舌打ちしたい気分でした。
「質問の答えになってないんじゃないか?」
「まぁ、そこは守秘義務みたいな?詳しくは慎吾に直接聞いてよ」
今度はコーンスープが運ばれてきました。ハンバーグステーキよりも後に運ばれてくるのは何でだろう、早く出来そうなのに。などと言いながら熱いスープを飲み始めます。
「女だったら有り、って事は当然男だから無いんだよな。一応聞くけど」
啜っていたスープ皿から顔を上げます。
「どう思う?」
「どう思うって何だ」
ついうろたえます。
「男だから無しだと思う?和己は」
「何でオレに聞くんだ。自分の事だろ」
可能性として有りえると言いたいのでしょうか。冗談じゃないと、段々我慢の糸がプツプツ切れていくような気がしました。
「わかんないから聞いてみた。ていうか和己はどうなの。彼女いるの」
「いねぇよ」
ぽんぽんと変わる話題に、何より慎吾への好意を示唆する言葉に、苛立ちが混じります。
「そうなんだ。作らないの」
「良いだろ、どうでも」
この対応はまるで良くない、理性的な部分でそうは思っていても、もはや山ノ井と渡り合って会話する気力もやる気もあまり残ってはいませんでした。
そしてテーブルにはサラダが到着しました。この順番てどうなんだろう、間違ってるよね、と一人呟き、サラダを食べ始めます。
「よく食うな」
まるで野球部に所属していた時のように、次々と食事を平らげていく様子に感想を漏らします。
「ストレス堪ってるから。食べ物でちょっと解消?タバコも吸わないしさ。…そういう和己は食べないね。デカイのに」
「腹減ってねえんだ」
「でもちょっと太った?ていうか肉付き良い気がする。触って良い?」
そう言うと立ち上がり、身を屈めておもむろに肩や二の腕、果ては胸の辺りを触りました。
「硬いじゃん。筋肉?筋肉付くような仕事じゃないよねえ」
ギクリとします。筋肉の元は、土日のハードな床拭きや、炊事洗濯から作られたものでした。
「ちょっと鍛えてるんだ。運動不足になるから」
「ふうん」
そこで、初めて回っていた口を止めました。和己をじっと見つめます。
「同期に、同じぐらい筋肉質な奴いたよ。何段だったかな。とにかく強くて学校の大会で優勝してた。和己も余程鍛えてんだ。筋トレ?」
「…まあな」
この山ちゃんは駄目だ、まるで事情聴取でもされているようだと和己は思いました。慎吾の言っていた”会わない方がいい”の意味も分かった気がしました。
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この辺で書き溜めたストックが終わりそうです。
そろそろ区切りかと。
>大学生になると共に家を出た弟の部屋を、個人的事情で掃除し始めたのですが。
何せ十年以上時が止まったままの部屋なので、凄いのが色々と出てきました。
中学時代(?)の柔道着とか。どっかの土産物が沢山とか。謎のラクガキとか。
そのラクガキがシュール過ぎてページをずっと捲る事が出来ませんでした。
勝手に漁ってゴメンネ、て感じではあるんですが、万が一帰ってきても片付けやしないので、明日にでも連絡を取って不用品を処分していきたいと思ってます。
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