だらだらと。
>拍手有難うございます!
>昨日までにお申込頂いた分は、本の発送を完了しております。
>お慎
------------------------------------
『お前の組の事と、会社のことを聞いておきたい。詳しく』
『…何で?』
『オレにとって必要だからだ。訳は、後々話すから。前に、高島組の名前が日記に出てきたよな。どう関係があるんだ?』
『高島組は、日本で一番大きな組だけど、全国で大きな組の半分は高島組系なんだよ。親父は島崎組の組長であると同時に、高島組の若頭補佐って立場でもある。だから何かあれば必ず大阪の本部に行くし、行事に顔を出すのは義務だし』
『そうなのか…』
『広間に、ウチの組の代紋の隣に、高島組の代紋も飾ってあるし』
『へえ…。その若頭補佐ってのは重要な地位なのか?』
『まぁそうだな。最高幹部の一人だからな』
『でも普通の商売もしてるんだろ?ヤクザとの両立なんて出来るのか』
『いや、普通に無理。っつーか、普通の商売してる時点でヤクザじゃねえし、ぶっちゃけ』
『じゃあ、どうやって両立させてるんだ?』
『うーん。会社の取締役は一応親父なんだけど、社員は殆どカタギっつーか一般人。普通に求人出して、採用してる。んで勿論、親父がヤクザの幹部なんて事は極秘だし。だってホテルとか飲食店やってんだぜ?ヤクザが関わってるって事がバレようもんならイメージ的に即アウトだろ?会社で事情知ってるのは極々一部。親父と、家庭教師のオカマと、後6、7人ぐらいだったと思う。その一部の人間は、ヤクザ兼社員て感じ』
『他の構成員は何をやって生活してるんだ?』
『細々やってる金融業ぐらいかな。昔に比べるとかなり減ったんだよ、組員も。1/10以下かな。ここ数年、新入りは全く入れてないし。正直ヤクザ業で今食ってけねえからな』
『じゃあ、他の組なんかはどうやって運営してるんだ』
『オレオレ詐欺とか振り込め詐欺とか?最近は一番増えてる。後はヤクだな。結構簡単に栽培出来ちまうから。まぁ全部犯罪だよ。昔に暴対法ってのが出来てから凄い取締りが厳しくなったとかでさ、それまで主流にしてたシノギが出来なくなってから生き辛くなったわけ。極道の人間は。正直ウチの組も苦しかったらしいけど。そこに親父が入ってきたんだよな。んで、周りの反発もかなりあったけど、最終的には組の存続が危ういっつー事で、会社運営に乗り出すことになった。じいちゃんは、もう自分の出番じゃないっつって半ばヤケで引退しちまうし』
『お前は、会社運営を今は手伝ってるのか』
『うん、ぼちぼちだな。まだまだ分かんねえ事だらけで大変だけど、何とかやってる。結局兄貴がさ、組の若頭って事もあるけど、ヤクザ業務は請け負ってくれてっからさ』
『…前に、他の組の組長に、景気が良い云々言われてたとか書いてたよな、確か。会社の事はバレてないのか』
『まぁ、バレて無いとは思う。バレてたらさすがに幹部やってらんねえし。でも組が潤ってるっつーのは何となく知れ渡っちゃってるみてえ。でも結局多めに見られてる部分があんだよ、ウチは』
『何でだ?』
『じいちゃんが組長やってた時代にさ、凄いデカイ抗争が勃発したんだよ。高島組と、今はもう無い、大きな組との。全国の組が巻き込まれる形で、勢力的には五分五分だったんだけど、関東で一番デカかったのがウチで、じいちゃんが高島組に付くようにって他の組の説得に回ったりしたわけ。それで拮抗してた勢力が高島組に傾いたんだな。だから当時の高島組の組長からしたら、じいちゃんに対して大恩があるんだよ。だから、今でもちょっと特別待遇されてる部分はある』
『すげぇな。なんか、関ヶ原の戦いの小早川秀秋…というか稲葉正成みたいな感じか?』
『なのかなぁ』
『じゃあ次は会社の事だけど、会社名とかはどうなってるんだ?島崎って名前は使って無いのか』
『や、使ってる。島崎ホールディング。まぁ、島崎なんて名前沢山あるし』
『前に泊まったホテルがあったな?あそこもお前の家の系列のホテルなんだな?』
『そう』
『この際聞いとくけど、実際はいくらだったんだ、あの部屋』
『2~3万?』
『はぁ、全くお前は』
『いいじゃん。どうせタダなんだしさ』
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>昨日までにお申込頂いた分は、本の発送を完了しております。
>お慎
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『お前の組の事と、会社のことを聞いておきたい。詳しく』
『…何で?』
『オレにとって必要だからだ。訳は、後々話すから。前に、高島組の名前が日記に出てきたよな。どう関係があるんだ?』
『高島組は、日本で一番大きな組だけど、全国で大きな組の半分は高島組系なんだよ。親父は島崎組の組長であると同時に、高島組の若頭補佐って立場でもある。だから何かあれば必ず大阪の本部に行くし、行事に顔を出すのは義務だし』
『そうなのか…』
『広間に、ウチの組の代紋の隣に、高島組の代紋も飾ってあるし』
『へえ…。その若頭補佐ってのは重要な地位なのか?』
『まぁそうだな。最高幹部の一人だからな』
『でも普通の商売もしてるんだろ?ヤクザとの両立なんて出来るのか』
『いや、普通に無理。っつーか、普通の商売してる時点でヤクザじゃねえし、ぶっちゃけ』
『じゃあ、どうやって両立させてるんだ?』
『うーん。会社の取締役は一応親父なんだけど、社員は殆どカタギっつーか一般人。普通に求人出して、採用してる。んで勿論、親父がヤクザの幹部なんて事は極秘だし。だってホテルとか飲食店やってんだぜ?ヤクザが関わってるって事がバレようもんならイメージ的に即アウトだろ?会社で事情知ってるのは極々一部。親父と、家庭教師のオカマと、後6、7人ぐらいだったと思う。その一部の人間は、ヤクザ兼社員て感じ』
『他の構成員は何をやって生活してるんだ?』
『細々やってる金融業ぐらいかな。昔に比べるとかなり減ったんだよ、組員も。1/10以下かな。ここ数年、新入りは全く入れてないし。正直ヤクザ業で今食ってけねえからな』
『じゃあ、他の組なんかはどうやって運営してるんだ』
『オレオレ詐欺とか振り込め詐欺とか?最近は一番増えてる。後はヤクだな。結構簡単に栽培出来ちまうから。まぁ全部犯罪だよ。昔に暴対法ってのが出来てから凄い取締りが厳しくなったとかでさ、それまで主流にしてたシノギが出来なくなってから生き辛くなったわけ。極道の人間は。正直ウチの組も苦しかったらしいけど。そこに親父が入ってきたんだよな。んで、周りの反発もかなりあったけど、最終的には組の存続が危ういっつー事で、会社運営に乗り出すことになった。じいちゃんは、もう自分の出番じゃないっつって半ばヤケで引退しちまうし』
『お前は、会社運営を今は手伝ってるのか』
『うん、ぼちぼちだな。まだまだ分かんねえ事だらけで大変だけど、何とかやってる。結局兄貴がさ、組の若頭って事もあるけど、ヤクザ業務は請け負ってくれてっからさ』
『…前に、他の組の組長に、景気が良い云々言われてたとか書いてたよな、確か。会社の事はバレてないのか』
『まぁ、バレて無いとは思う。バレてたらさすがに幹部やってらんねえし。でも組が潤ってるっつーのは何となく知れ渡っちゃってるみてえ。でも結局多めに見られてる部分があんだよ、ウチは』
『何でだ?』
『じいちゃんが組長やってた時代にさ、凄いデカイ抗争が勃発したんだよ。高島組と、今はもう無い、大きな組との。全国の組が巻き込まれる形で、勢力的には五分五分だったんだけど、関東で一番デカかったのがウチで、じいちゃんが高島組に付くようにって他の組の説得に回ったりしたわけ。それで拮抗してた勢力が高島組に傾いたんだな。だから当時の高島組の組長からしたら、じいちゃんに対して大恩があるんだよ。だから、今でもちょっと特別待遇されてる部分はある』
『すげぇな。なんか、関ヶ原の戦いの小早川秀秋…というか稲葉正成みたいな感じか?』
『なのかなぁ』
『じゃあ次は会社の事だけど、会社名とかはどうなってるんだ?島崎って名前は使って無いのか』
『や、使ってる。島崎ホールディング。まぁ、島崎なんて名前沢山あるし』
『前に泊まったホテルがあったな?あそこもお前の家の系列のホテルなんだな?』
『そう』
『この際聞いとくけど、実際はいくらだったんだ、あの部屋』
『2~3万?』
『はぁ、全くお前は』
『いいじゃん。どうせタダなんだしさ』
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PR
>いや~、ノ/ートン/アン/チウィ/ルスを2009バージョンにしたところ、PCの起動時間が多分半分ぐらいになりました。
ていうか、やっぱりノー/トン先生が原因だったんだな、って認識しましたよ。起動時間が半端無かったんで。
ファイアウォール機能が無くなったと知って、買うかどうか迷ったわけですが、Windowsのファイアウォールを有効にしといたので大丈夫…なのかなと。
>お慎
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「今はそう思ってても、時間が経てばいずれ、忘れる事だって出来る。今は思いつめてるだけなんだ、慎吾。いいか、確かに今お前は河合君が好きなんだろう。どうしようもないぐらいに好きなのかもしれない。だけどな、何年か経って振り返れば、別の女性を同じぐらい好きになれるような日が来るんだよ」
「そんな日来てたまるかよ!大体何年か先って何なんだよ。オレらはもう四年待った!後何年待てっつうんだよ!五年か?十年か?もうそんな約束するつもりねえからな!」
慎吾が憤るその隣で、和さんは出来る限り頭を下げ、静かに言いました。
「どうか、許してください。慎吾を縛るつもりはありません。慎吾がもし、別の人間を好きになる日が来た時は、自分は身を引きます。ですからどうか、今は共に居させてください。慎吾を愛しています。守りたいんです」
「和己…、んな、身を引くとか、」
「慎吾を守るだと?まるで結婚の許可を貰いに来た男みたいな事を言うんだな。ただのカタギに何が出来る」
「確かに自分はただの一般人です。それでも、出来ることをしたいと思っています」
「出来ること?」
「こちらの組に入れてください」
「何だと?!」
「和己?!何言ってんだよ!」
「傍で見守らせてください」
「馬鹿な事を言うな!極道を舐めてるのか!」
「そんなつもりは毛頭ありません」
「黙れ!」
「私は、四年前に言いました。親と縁を切ることがあっても、と。その覚悟は今も変わっていません。何でもやります。慎吾の為に、出来ます」
そう言って、表を上げた和さんの表情は真剣そのものでした。悟の鋭い眼光から一時も目を離しません。
「馬鹿げてる」
そう悟は吐き捨てました。
「大体、会社に就職したとか言っていただろう。それで組に入れろだと?」
「はい、面接を経て、就職させて頂きました。貴方の会社に」
「何?」
「新入社員の名簿はご覧になっていませんか?」
「和己…前に、会社の事とか、組の事とか色々聞いたのって」
隣の慎吾を見た和さんは微笑みました。それが答えでした。
それは、丁度一年前にさかのぼります。四月に慎吾と会っていた時の事でした。
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ていうか、やっぱりノー/トン先生が原因だったんだな、って認識しましたよ。起動時間が半端無かったんで。
ファイアウォール機能が無くなったと知って、買うかどうか迷ったわけですが、Windowsのファイアウォールを有効にしといたので大丈夫…なのかなと。
>お慎
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「今はそう思ってても、時間が経てばいずれ、忘れる事だって出来る。今は思いつめてるだけなんだ、慎吾。いいか、確かに今お前は河合君が好きなんだろう。どうしようもないぐらいに好きなのかもしれない。だけどな、何年か経って振り返れば、別の女性を同じぐらい好きになれるような日が来るんだよ」
「そんな日来てたまるかよ!大体何年か先って何なんだよ。オレらはもう四年待った!後何年待てっつうんだよ!五年か?十年か?もうそんな約束するつもりねえからな!」
慎吾が憤るその隣で、和さんは出来る限り頭を下げ、静かに言いました。
「どうか、許してください。慎吾を縛るつもりはありません。慎吾がもし、別の人間を好きになる日が来た時は、自分は身を引きます。ですからどうか、今は共に居させてください。慎吾を愛しています。守りたいんです」
「和己…、んな、身を引くとか、」
「慎吾を守るだと?まるで結婚の許可を貰いに来た男みたいな事を言うんだな。ただのカタギに何が出来る」
「確かに自分はただの一般人です。それでも、出来ることをしたいと思っています」
「出来ること?」
「こちらの組に入れてください」
「何だと?!」
「和己?!何言ってんだよ!」
「傍で見守らせてください」
「馬鹿な事を言うな!極道を舐めてるのか!」
「そんなつもりは毛頭ありません」
「黙れ!」
「私は、四年前に言いました。親と縁を切ることがあっても、と。その覚悟は今も変わっていません。何でもやります。慎吾の為に、出来ます」
そう言って、表を上げた和さんの表情は真剣そのものでした。悟の鋭い眼光から一時も目を離しません。
「馬鹿げてる」
そう悟は吐き捨てました。
「大体、会社に就職したとか言っていただろう。それで組に入れろだと?」
「はい、面接を経て、就職させて頂きました。貴方の会社に」
「何?」
「新入社員の名簿はご覧になっていませんか?」
「和己…前に、会社の事とか、組の事とか色々聞いたのって」
隣の慎吾を見た和さんは微笑みました。それが答えでした。
それは、丁度一年前にさかのぼります。四月に慎吾と会っていた時の事でした。
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>7日10時に拍手コメントくださった方
コメント有難うございます~!いやもうお慎はホント楽しんでもらえてるのか凄い不安に陥りながら続けてるんで、凄く嬉しいです。
またどうぞ、読んでやってくださいませ!
>お慎なんですが、慎吾父、慎吾母、と打つのが疲れてきたので名前で行きます。
慎吾父→悟 慎吾母→一子(かずこ) 慎吾兄(一吾) ちなみに慎吾祖父→慎之介
>お慎
------------------------------------
車が屋敷に到着し、すぐに和さんは慎吾の父と母、そして兄の待つ広間へと連れて行かれました。慎吾も一緒です。
「こんにちは、河合さん」
一子が挨拶し、和さんも頭を下げて挨拶します。
「ご無沙汰しておりました。今日は、改めてお願いに参りました」
「そうですね。四年間お疲れ様でした、といったところかしら」
「大学を卒業し、今は就職先の会社で働き始めたところです。年齢的にも成人いたしました。改めてどうか、慎吾とのお付き合いを認めて頂けないでしょうか」
「駄目だ」
短く言い放ったのは慎吾の父(悟)でした。
「男との付き合いなんて一切認めないからな」
「貴方は、例え相手が女性でも認めないのではなくて?」
「そんなわけ無いだろう!相手が女性だったら、そりゃもう祝福するぞ」
「本当かしら」
疑わしげな目で一子は悟を見やります。
「お父さん」
ここで一吾(慎吾の兄)が口を開きます。
「何だかんだで二人は四年間も耐えてきたんですよ。互いを想うが故にです。そんな二人を力ずくで引き離そうとした所で無理があります。下手すると駆け落ちなんて事にもなりかねませんよ」
「何だと!駆け落ちなんて許さないからな!」
「もう慎吾も大人です。少し遠くから見守ってやっても良いのではないですか」
「良いわけあるか!男だぞ!」
「親父が何つっても、オレは和己と付き合うから。和己じゃねーと駄目なんだよ。有り得ねえんだよ、オレん中で」
慎吾が言い張ります。
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コメント有難うございます~!いやもうお慎はホント楽しんでもらえてるのか凄い不安に陥りながら続けてるんで、凄く嬉しいです。
またどうぞ、読んでやってくださいませ!
>お慎なんですが、慎吾父、慎吾母、と打つのが疲れてきたので名前で行きます。
慎吾父→悟 慎吾母→一子(かずこ) 慎吾兄(一吾) ちなみに慎吾祖父→慎之介
>お慎
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車が屋敷に到着し、すぐに和さんは慎吾の父と母、そして兄の待つ広間へと連れて行かれました。慎吾も一緒です。
「こんにちは、河合さん」
一子が挨拶し、和さんも頭を下げて挨拶します。
「ご無沙汰しておりました。今日は、改めてお願いに参りました」
「そうですね。四年間お疲れ様でした、といったところかしら」
「大学を卒業し、今は就職先の会社で働き始めたところです。年齢的にも成人いたしました。改めてどうか、慎吾とのお付き合いを認めて頂けないでしょうか」
「駄目だ」
短く言い放ったのは慎吾の父(悟)でした。
「男との付き合いなんて一切認めないからな」
「貴方は、例え相手が女性でも認めないのではなくて?」
「そんなわけ無いだろう!相手が女性だったら、そりゃもう祝福するぞ」
「本当かしら」
疑わしげな目で一子は悟を見やります。
「お父さん」
ここで一吾(慎吾の兄)が口を開きます。
「何だかんだで二人は四年間も耐えてきたんですよ。互いを想うが故にです。そんな二人を力ずくで引き離そうとした所で無理があります。下手すると駆け落ちなんて事にもなりかねませんよ」
「何だと!駆け落ちなんて許さないからな!」
「もう慎吾も大人です。少し遠くから見守ってやっても良いのではないですか」
「良いわけあるか!男だぞ!」
「親父が何つっても、オレは和己と付き合うから。和己じゃねーと駄目なんだよ。有り得ねえんだよ、オレん中で」
慎吾が言い張ります。
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>地元では雪が凄く降りました。明日からまた止むらしいですが。
早めのスノータイヤが結局役に立ってるのか立ってないのか良く分かりません。
現在観てる、チ/ームバ/チスタの栄/光と、流/星の/絆、どちらも続きが気になるタイプの話なので、はやく最終回が来てほしくてたまりません。
早く真犯人と片がついて欲しいです。
>お慎
------------------------------------
そして更に、五ヶ月が過ぎようとしていました。慎吾の母が約束したとおり、特にその後和さんが咎められる事も無く、待ちに待った四年が経つことになります。大学は無事卒業し、和さんは既にある決意を固めていました。
4月に入り、とうとう待ちに待った四年と言う歳月を経て、和さんは当日を迎えました。緊張のせいか、目覚まし時計が鳴る三十分ほど前には目が覚めてしまいましたが、身支度を整え、これまで通りに日記や慎吾への土産品をバックパックに詰め込みます。そして家を出ようとすると、玄関の前に黒塗りの高級車が停まっていました。後部座席のドアが開き、出てきたのは慎吾でした。スーツ姿ではにかみながら、「来ちゃった」と言いました。
「だってさ、やっぱ待ちきれなかったっつーか、」
慎吾の言葉を聞き終える前に和さんは駆け寄って強く抱きしめていました。
「和、」
ただただ無言で、慎吾の身体を抱き寄せたまま動こうとしません。
「……」
まるで迷子になってしまった子供が、ようやく巡り会えた母親から離れようとしないように、慎吾の身体を中々開放しようとはしませんでした。
慎吾は暫くされるがままになっていましたが、五分ほどして「近所の人が見てる」と囁きました。和さんは慌てて身体を離します。周りを見回すと確かに、斜め向かいの家のおばさんが、回覧板を持ったまま呆然とこちらを見ていました。
「車乗って」
慎吾に促されるまま、後部座席に乗り込むと、静かに車は発進しました。和さんは溜息を吐くと、横にいる慎吾に向き直り、顔を両手で挟み、じいっと覗き込みます。
「髪のびたか?」
「ん?少し」
「ちょっと痩せてねえか?」
「変わってねーって。三ヶ月前と」
「…そっか」
慎吾はなんだかおかしくて少し笑ってしまうのでした。すると今度は頬の肉を掴まれ、ひっぱられました。
「はひふんだよ!」
手を払います。
「いやなんか、今日のこの日を実感したくて。お前が目の前にいて、もう会えない日々から開放されたって実感が、まだちょっと湧いてない」
「じゃあ自分の顔でもつねっとけよな~」
「お前はあるのか?オレはまだ夢から覚めてない気がして」
「オレはありまくりだけど。つか目の前にいるだろオレが」
「うん、そうなんだけどな」
「裕樹もいるし」
「え?」
向かい合わせの座席に座って睨んでいる木下君に、この時和さんは初めて気がついたのでした。
「大丈夫かよ。そんなんでちゃんと話出来るのかよ。親父と」
「親父さんいるのか?」
「うん。お前から色々聞くっつって、何か朝から息巻いてた」
「そうか」
------------------------------------
早めのスノータイヤが結局役に立ってるのか立ってないのか良く分かりません。
現在観てる、チ/ームバ/チスタの栄/光と、流/星の/絆、どちらも続きが気になるタイプの話なので、はやく最終回が来てほしくてたまりません。
早く真犯人と片がついて欲しいです。
>お慎
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そして更に、五ヶ月が過ぎようとしていました。慎吾の母が約束したとおり、特にその後和さんが咎められる事も無く、待ちに待った四年が経つことになります。大学は無事卒業し、和さんは既にある決意を固めていました。
4月に入り、とうとう待ちに待った四年と言う歳月を経て、和さんは当日を迎えました。緊張のせいか、目覚まし時計が鳴る三十分ほど前には目が覚めてしまいましたが、身支度を整え、これまで通りに日記や慎吾への土産品をバックパックに詰め込みます。そして家を出ようとすると、玄関の前に黒塗りの高級車が停まっていました。後部座席のドアが開き、出てきたのは慎吾でした。スーツ姿ではにかみながら、「来ちゃった」と言いました。
「だってさ、やっぱ待ちきれなかったっつーか、」
慎吾の言葉を聞き終える前に和さんは駆け寄って強く抱きしめていました。
「和、」
ただただ無言で、慎吾の身体を抱き寄せたまま動こうとしません。
「……」
まるで迷子になってしまった子供が、ようやく巡り会えた母親から離れようとしないように、慎吾の身体を中々開放しようとはしませんでした。
慎吾は暫くされるがままになっていましたが、五分ほどして「近所の人が見てる」と囁きました。和さんは慌てて身体を離します。周りを見回すと確かに、斜め向かいの家のおばさんが、回覧板を持ったまま呆然とこちらを見ていました。
「車乗って」
慎吾に促されるまま、後部座席に乗り込むと、静かに車は発進しました。和さんは溜息を吐くと、横にいる慎吾に向き直り、顔を両手で挟み、じいっと覗き込みます。
「髪のびたか?」
「ん?少し」
「ちょっと痩せてねえか?」
「変わってねーって。三ヶ月前と」
「…そっか」
慎吾はなんだかおかしくて少し笑ってしまうのでした。すると今度は頬の肉を掴まれ、ひっぱられました。
「はひふんだよ!」
手を払います。
「いやなんか、今日のこの日を実感したくて。お前が目の前にいて、もう会えない日々から開放されたって実感が、まだちょっと湧いてない」
「じゃあ自分の顔でもつねっとけよな~」
「お前はあるのか?オレはまだ夢から覚めてない気がして」
「オレはありまくりだけど。つか目の前にいるだろオレが」
「うん、そうなんだけどな」
「裕樹もいるし」
「え?」
向かい合わせの座席に座って睨んでいる木下君に、この時和さんは初めて気がついたのでした。
「大丈夫かよ。そんなんでちゃんと話出来るのかよ。親父と」
「親父さんいるのか?」
「うん。お前から色々聞くっつって、何か朝から息巻いてた」
「そうか」
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>お慎
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「心配いらねーって」
部屋に戻ると、慎吾はのんびりとそう言いました。
「筋を通さねえってのは、こっちの世界じゃ話になんねーからな。だから約束は必ず守るし」
「…そうなのか」
先ほどの夕食会で、げっそりしてしまった和さんが力無く呟きます。
ちなみに殆ど目の前の食事には手をつける余裕がありませんでした。食べ終えられなかったのは、途中退席した慎吾の父と、和さんのみです。
「つかさあ、親父が登場したせいで、今日は二人の時間がかなり持ってかれちまったじゃん。ヤれてねえし」
和さんにはもはや返事をする元気もありませんでした。慎吾が男と付き合う、から山に埋める云々の話に繋がっただけに当然と言えば当然でした。
「山に埋めるってのは具体的にはどうなるんだ…?」
気がつけば、そんな事を言っていました。
「ん?いや、そのまんまだよ。山奥に行って、埋める奴に、自分が入るための穴をスコップで掘らせるんだよ。んで大体埋まるかな~って深さまで到達したところで、」
「うああああ!もういい!」
慌てて静止します。
「なあ和己。和己は心配いらねーから」
じっと慎吾が和さんを見て言いました。
「元々、オレん家の事知らねーで付き合ってたんだし。好きになったのもオレの方からで。本当は、卒業したらもう会えないと思ってたし。そんでも来てくれて凄いオレは嬉しかったんだ。オレの為に、あんな条件設けてまで許してもらおうとしてくれて。…親と縁切っても、つってたよな、兄貴。知らなかった。…和己が犠牲払うことじゃねえよ。いざとなったら、オレが家出るし」
「慎吾、それは駄目だ。お前の家族はお前の事を凄く大事に思ってる。だからああいう話になるのも、考えてみたら当然だ。お前のお父さんにとっては青天の霹靂だっただろうし。混乱して当たり前だ」
「でも、だからって和己が家族と縁切るなんて駄目だ」
「…覚悟を見せなきゃ駄目だったんだ、あの時は。必ず切ると決まったわけじゃない。……上手くいくように考えよう慎吾。約束は守られるんだろ?」
「うん」
先ほどの狼狽ぶりからは一転、慎吾の事を思うと、萎えそうになった気力もみるみる戻ってくるのでした。
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「心配いらねーって」
部屋に戻ると、慎吾はのんびりとそう言いました。
「筋を通さねえってのは、こっちの世界じゃ話になんねーからな。だから約束は必ず守るし」
「…そうなのか」
先ほどの夕食会で、げっそりしてしまった和さんが力無く呟きます。
ちなみに殆ど目の前の食事には手をつける余裕がありませんでした。食べ終えられなかったのは、途中退席した慎吾の父と、和さんのみです。
「つかさあ、親父が登場したせいで、今日は二人の時間がかなり持ってかれちまったじゃん。ヤれてねえし」
和さんにはもはや返事をする元気もありませんでした。慎吾が男と付き合う、から山に埋める云々の話に繋がっただけに当然と言えば当然でした。
「山に埋めるってのは具体的にはどうなるんだ…?」
気がつけば、そんな事を言っていました。
「ん?いや、そのまんまだよ。山奥に行って、埋める奴に、自分が入るための穴をスコップで掘らせるんだよ。んで大体埋まるかな~って深さまで到達したところで、」
「うああああ!もういい!」
慌てて静止します。
「なあ和己。和己は心配いらねーから」
じっと慎吾が和さんを見て言いました。
「元々、オレん家の事知らねーで付き合ってたんだし。好きになったのもオレの方からで。本当は、卒業したらもう会えないと思ってたし。そんでも来てくれて凄いオレは嬉しかったんだ。オレの為に、あんな条件設けてまで許してもらおうとしてくれて。…親と縁切っても、つってたよな、兄貴。知らなかった。…和己が犠牲払うことじゃねえよ。いざとなったら、オレが家出るし」
「慎吾、それは駄目だ。お前の家族はお前の事を凄く大事に思ってる。だからああいう話になるのも、考えてみたら当然だ。お前のお父さんにとっては青天の霹靂だっただろうし。混乱して当たり前だ」
「でも、だからって和己が家族と縁切るなんて駄目だ」
「…覚悟を見せなきゃ駄目だったんだ、あの時は。必ず切ると決まったわけじゃない。……上手くいくように考えよう慎吾。約束は守られるんだろ?」
「うん」
先ほどの狼狽ぶりからは一転、慎吾の事を思うと、萎えそうになった気力もみるみる戻ってくるのでした。
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