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だらだらと。
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 部屋、というには広すぎる室内で、戸を開けっ放しにして悟は中庭を眺めます。午前中は休むと決め、のんびりとした良い気分の中で一子に膝枕されながら、つかの間の自由を噛み締めます。
「一子さん、まだ二人がちっちゃかった頃の事覚えてる?」
「いつの話です?」
穏やかに一子は先を促します。悟は半ば独り言のように続けます。
「一吾と慎吾と裕樹がさ、まだ五、六歳の頃だったかなぁ。三人で中庭でかくれんぼしてて。その時、今みたいに部屋からそれを眺めてたんだ、二人で。一吾が鬼で二人が隠れたんだ。中庭も広いから時間がかかったんだけど暫くして裕樹は見つかって。だけどいつまで経っても慎吾が見つからなかった。段々と嫌な予感がして。一吾も裕樹も不安な顔になって。もしかして池にでも落ちたんじゃないかって。
悟がまさに今朝感じたように、背中が寒くなるような感覚に襲われたのでした。
「あぁ、覚えてますよ。あの子はちょっと放浪癖があるのかもしれませんね」
おかしそうに一子が後を続けます。
「皆が心配し始めた時、何事も無かったみたいに裏庭に続く細道から慎吾がトコトコ歩いてくるんですから」
「そうそう。一吾は『かくれんぼは中庭の中だけだって決めただろ』って物凄く怒ってた。慎吾は頭をゲンコツで殴られて泣きそうになって、でも口をへの字にして堪えてたな」
その光景を思い出したのか、どこか遠い所を見るように悟は目を細めました。
「その慎吾が、何か両手に持ってるなと思ったら、こっちに走ってきて、『お父さんにあげる』って言ったんだ。両手一杯のドングリを」
慎吾はかくれる所を探しているうちに、裏庭へ続く細道にドングリが落ちているのに気がついたのでした。その後はドングリの事で頭が一杯になり、夢中になって裏庭で拾っていたのです。
『あげるけど全部取ったら駄目だよ。お兄ちゃんと裕樹にもあげるから』
そう言った慎吾は何て可愛いのだろうと、先ごろまでの心配を他所に思ったのでした。
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