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だらだらと。
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 しかし次の日の夕刻、和己は一吾に声をかけられました。
「よう」
部屋に戻る途中の廊下で、中庭を眺めながら一吾はタバコを咥えていました。ここ数日の疲れか、目の下にはわずかにクマが出来ているようでした。
「…お疲れ様です」
昨日の慎吾との会話が甦り、自然と声が硬くなります。
「何ていうか、悪かったな。入って二年足らずで解散なんて考えもしなかっただろ。何の為に入ったんだかな」
「いえ」
「でもお前達にとっては良かったんだな。厄介な障害が無くなる」
日は既に沈み、一吾の吐き出したタバコの煙が闇へと消えていきました。
「慎吾と付き合いだしてからは何年になる?」
「…八年目でしょうか」
「そうか。長いな。オレはそんな長く続いたこと無えよ」
よっぽど相性が良いのかな、それとも愛があるとかそういう事か?と独り言のように呟きます。
「思ってたんだが、お前はちょっと普通じゃないよな。極道と聞いてビビるどころか喧嘩売りやがったんだからな」
「そんなつもりでは」
「そんなつもりが無くても、あれはそうだろ。言っちゃなんだが、もし他の組で同じ事やったら冗談じゃなく無事じゃすまないと思うぞ。ウチがちょっと特殊なだけで」
「……」
「でもそれも考えのうちか。そんな事はやらないと踏んでたのか」
「いえ、それは…。ただ言えるのは、あの時は必死でした。あの機会を逃したら、慎吾とは終わってしまうんじゃないかと思って」
「それは無いな」
一吾は断言します。視線は相変わらず、闇に支配された中庭にありました。
「何故ですか」
「慎吾の気持ちはいつだってお前にあった。お前が慎吾を諦めることがあっても、慎吾の想いが消えることは無かった」
「……」
「違和感があったんだ。慎吾が高校生の頃だ。野球に打ち込んでて後は適当な弟が、何かに気を取られてると思った。これまでそんな事は一度も無かった。好きな女でも出来たのかと思ってたが、それにしたってだ。まるで何かに捕われているようだった。卒業してからお前が現れて確信した。原因はこいつだってな」
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>振りのツボマンガを描かれてるサイトさんを発見したものの、数ヶ月前に更新がストップしている様子で、どうして気付くのが遅いのかなぁと自分を責めた次第です。

>久しぶりにバク/マン。を読んできました。
恋愛だかなんだかは正直どうでもいいなと思うので、マンガの方の展開で楽しませて欲しいところです。
やっぱり初期の読み切りで描いてた路線が一番良いと思うんですが、そういう方向に持って行くんでしょうか。
ていうか行って欲しいですけど。
新/妻先生もモチベーションが下がってるっぽいですし。しかしツボです。新/妻さんは。
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 しばらくすると和己は徐々に冷静さを取り戻し、冷えた頭であれこれと考え、導き出された答えは”これが一番良い”というものでした。
 組長である悟は元々カタギから結婚を期に組に入った人間でした。組長というものに未練は恐らく無く、長男の一吾に実際仕事を一任していました。また、経営者としての顔を考えれば、組の存在は障害以外の何者でもありませんでした。イメージ第一のサービス業にあって、ヤクザのヤの字も出てはならないのです。悟はその点に於いて神経を磨り減らしてきた事は想像に難くありません。恐らく、つきに一度程度しか屋敷に戻らないのも、その辺を考慮してそうしていたのではと思われました。
 また慎吾は、ヤクザ業ではなく、殆ど会社の方に比重を置いていました。その代わりにヤクザ業を一任されていた兄の一吾でさえ、会社の仕事を手伝わされそうだという話もありました。組の解散は急に決まったことではなく、以前から決められていたのだと言えます。組員の数が昔に比べ激減している、新しい人間を全く入れていなかった、という事実からもそれは伺えました。
 幹部は既に了承済み、という事から、上層部では既に固まっていた話だったのでしょう。一吾が関西に頻繁に足を運んでいたのも、組の解散に関しての事に違いありませんでした。
 ある程度、頭の整理が出来た所で和己は慎吾の携帯へとかけました。
『もしもし』
少し疲労の滲む声が聞こえました。
「話があるんだけどな。疲れてるなら明日でも良いぞ」
『や、いーよ。ちょっとなら。つーかかかってくるの待ってたし』
「そうか」
組の解散は、少なからず慎吾と和己の将来にも関わってくる問題でした。
「とりあえず、組の解散ってのは、オレ達にとっちゃ良い事だと言えるよな?」
そこをまず確認しておこうと思いました。男同士という以外に、言うまでもなく”極道”という分厚い壁が二人の間に幾度となく立ちふさがってきたからです。
「仮に、オレとお前が駆け落ちしても、沈められたり埋められたりってもう、しない、よな…?」
語尾が不安げになったのは、かつての悟の剣幕を思い出したからでした。
『駆け落ちすんの?』
「いや、そこじゃなくて。仮にの話だ」
『なんだよ』
少し不満げに返ってきます。更に続いた言葉は、
『多分しない、かなぁ…』
という何とも残念なものでした。
『だってそりゃ親父は組長じゃなくなるけどさ。傘下の組は沢山存在するわけだし。ちょっと声をかければやってくれると思うよ?』
気軽に言い出しました。相変わらずその辺の緊張感は持っているように感じられません。
「駄目じゃねえか全然」
大きく溜息をつきました。もしかすると慎吾との未来が明るく照らされるのではと期待した分、落胆は隠せません。
『や、でも。しねえって。親父は基本、血生臭い話は嫌いだし』
「ホントか?」
どうにも信用できませんでした。
『寧ろ兄貴のがするかも』
「一吾さんが?!」
『兄貴もさ~、どこにスイッチあんのかイマイチ良く分かんねーんだけど。たまにわけわかんねートコでキレたりするし』
しかし和己はこれまで一吾が激高たりする所を見た事がありませんでした。いつも沈着冷静で物事を的確に判断し、そつの無い様は見ていて憧れさえ抱かせるものでした。
 その日は疲れている慎吾に気を使い、改めて二日後の休日に詳しい話をする約束をし、携帯を切ったのでした。
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本屋に久しぶりに行ったのですが、振りも宇宙/兄弟も休載という残念な事になってました。ついてません。
の/だめ最終巻を買いましたけど、やっぱりあっさり終わりすぎな気がしました。
体調や育児等で大変なら、休載でも良いと思うのですが。
番外編でやるよりも。
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「皆も知っての通り、高島組先代が亡くなられた。ウチの先代とは深い交友、絆で結ばれていた方だ。これは、ウチの組にとっても一つの契機となる。…皆、落ち着いて聞いて欲しい」
そこで悟は一息入れました。組員たちを見回します。
「これは、以前から義父殿とも話し合っていた事だ。…島崎組は、解散する」
 場が騒然となりました。無理もありません。和己も事の次第についていく事が、出来ませんでした。
「もう一度言う。島崎組は解散する。これはもう決まった事だ。幹部は既に了承している。ウチのシマに関しては、それぞれの(傘下の)組に分配される事になる。ただ、下の方には寝耳に水の話だっただろう。これまで話す事が出来ず悪かった。身の振り方に関しては、こちらで出来る限り相談に乗る。よく考えてくれ。今のまま極道でいたいのならそれもいい。カタギも良いだろう。金融部門は残すつもりだから、そこで働いていく事も可能だ。…何か質問はあるか」
慎吾達一家と幹部を除いて場は大きなざわめきに包まれました。頭の処理が追い付いていないのか、暫く間がありましたが、やがて一人の組員が、何故解散するのかと声を上げました。
「一言で言うなら、ウチがもう必要とされてないという事だ。大きい意味で言えば、極道モンが必要とされる時代はとうに終わったと思っている。それでも高島組の抗争では先代の力が大きな影響を及ぼした事もあったが、そんな時代ももう終わって久しい。だから組員の数は年々減らしていった。世間には、こういう世界で無ければ生きていけないようなはみ出し者もいるが、それはそれぞれの幹部が立派な受け皿になってくれるだろう」
場は静まり返りました。一体どうすればいいのか、皆一様に分からないで居るようでした。
「色々考える事もあるだろう。この場は解散する。聞きたいことのある奴はいつでも来てくれ。ただし明日以降だ」
そう言って悟は話を打ち切ったのでした。
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慎吾も和己も登場しなくてすみません。
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 ところが数日後、思わぬ横槍が入ることとなりました。
 朝、和己がいつも通りに出勤の支度をしていると、邸内がにわかに慌しくなったことに気がつきました。
「とにかく急げ!他の組に遅れを取るんじゃねえ!」
「喪服も用意しとけ!傘下の事務所には連絡入ってんだろうな!」
バタバタと大きな足音、怒声が飛び交います。ただ事ではないことが察せられ、着替えの途中でしたが部屋を飛び出しました。
「何かあったんですか」
兄貴分の一人が通りがかった所で声を掛けます。
「高島組の先代が危篤だ。とにかく駆けつける必要がある。今は説明してる時間はねえ」
言うだけ言って、廊下を走り去っていきます。
 その後、組長である悟、一子、一吾、慎吾、そして初めて目にする先代組長の慎之介が幹部を伴って屋敷を慌しく出立していきました。

 会社へと向かう電車の中で、事の次第について和己は考えます。高島組はこの国で最も大きい組であり、島崎組組長の悟はそこの最高幹部である事は以前に慎吾から聞かされていました。また、先代組長、つまり慎吾の祖父が昔の大きな抗争の際に、高島組の先代に大きな借りがある事も。その人物が危篤だというのは確かに大事であり、いの一番に駆けつける立場である事に違いはありません。しかし、現組長ではなく、先代の危篤に、それ程の影響があるものなのかとも考えます。朝の切迫した空気を鑑みるに、どうもそれだけではないような予感がしていたのです。”説明してる時間は無い”と言った兄貴分の言葉にも引っかかりを覚えていました。説明するような事があるという事です。
 また、和己は一吾が四ヶ月程前から忙しく動き回っていた事にも思いを馳せます。一度も同行しろとは言われなかったものの、頻繁に関西へと足を運んでいたようでした。組関係の用事である事は間違いありません。信用を得ていると思っていたのに、同行させてもらえないのは下っ端だからなのか、などとその頃は考えていましたが、何か大きな動きが関わっているように今は思えるのでした。

 その日は悶々とする気持ちを抑えつつ、仕事を終えて組へと帰りました。そして帰宅してすぐ、高島組前組長が亡くなった事を知らされました。組長始め、幹部たちはそのまま通夜に参加しているとの事でした。
 和己達居残り組はそのまま待機を命じられました。特にこれといってやる事も無いので通常通り出勤するようにと言われます。そのまま数日が過ぎ、慎吾達が戻ってきたのは五日目の夕方でした。
 その数時間後、組員たちへ大広間へ集まるようにと伝えられ、更に続々と傘下の組長達が組に姿を現しました。それを慌しく迎え、和己もまた時刻になり大広間へと向かいます。普段は屋敷にいない幹部、組員でそこは一杯になっており、八十名は下らないであろう人間が一堂に会するのを、和己は始めて目にしました。
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昨日今日と余裕が全く無くて大変でした。
最近は立ち読みもしてなくて、そういえばアフタが出てるんだっけ、とか。
元気があったら読みにいこうと思います。ちょっと遠いんですよね…。
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 これまで皆無と言って等しかった休日が急に与えられ、一体何をして良いのかと、部屋に戻ってぼんやり考えます。
 畳に横になり、壁掛け時計の秒針が、ゆったりと回っていくのを眺めながら、取りあえずは今日の分の洗濯物はちゃんと取り込もう、最後の奉公だからちゃんと終わらせようなどと考えました。しかし今後は何をすればいいだろう、普通はどこかに遊びに行くのかな…と考えたところで、ようやく考え付くべき所へ思考が働いたのでした。約二年間、まとまった時間を過ごす事が出来なかった慎吾の事です。恋人であれば、休日は外出するとか、二人でまったりと部屋で過ごすとかいった平凡ながらも大切な事がこれまで出来ないでいたのでした。
 しかし慎吾は文句を言った事はありませんでした。和己の忙しい日常を知っていたからにしても、我慢していたに違いありません。会えるのは精々、仕事などを終え、人目につきにくい深夜でした。
(屋敷じゃ人目につくから、外で会ってデートでもしよう。いや、この際まとまった休みを貰って旅行に行くってのはどうだ?空白の時間が長かったけど、あいつとは付き合い始めて何年も経ってるんだ。普通の恋人同士なら旅行の一つや二つ行ってるのが当たり前だろ)
とそこまで考え、「オレって酷い恋人だなぁ…」と一人呟きました。
 慎吾に無理をさせてきた事を改めて振り返ります。四年間会わないなどという約束を取り付けたのも、組に入ったのも、全て和己の独断でした。それが慎吾との将来を考えてのものだったとしても、結果的に我慢をさせてきたのは間違いありませんでした。

 その夜、和己はひっそりと慎吾の部屋を訪れました。人が居ないのを確認し、ゆっくりガラス戸を開けます。慎吾はベッドにうつ伏せに寝そべって雑誌を見ていました。
 後ろ手に戸を閉め、「慎吾」と小声で声をかけます。するとびくっと反応し、ばっと後ろを振り返ったのでした。
「何だよびっくりすんだろ!気配消して入ってくんなよ!入る前に声ぐらいかけろ馬鹿」
少し驚かすつもりが慎吾は余程驚いたようでした。
「すまん」
「大体よー、オレが一人シコシコやってたらどうするつもりなんだよ。気まずいだろ」
「一人でやってないでオレを呼べば良いだろ」
「お前、明日も地獄の床拭きが待ってんだ、とかってたまに拒否んだろ!」
「もうしない」
「?」
 そこで和己は事の次第を話しました。これからは二人の時間が十分に取れ、更には一緒に旅行に行きたいと考えている、と。すると慎吾は喜色満面の笑みを浮かべ、本棚から慌てて雑誌を引っこ抜いてきました。更に、付箋のついたページを開いて見せます。
「ここに行きたい」
どうやら前々から、もし旅行に行けるならと目星をつけていたようでした。しかしそれをおくびにも出さなかった事に、和己は申し訳ないような切ないような気持ちになります。なんでも希望を叶えてやりたいと思いました。
「じゃあ行こう。あまり忙しくない時期を狙って有給願いを出さねえとだから、ちょっと待つかもしれないけど」
「ここで良いのかよ」
「そこに行きたくて、付箋まで付けてたんだろ」
「まぁ、そうなんだけどさあ。でもココ良くね?ちゃんと見ろよ。雰囲気良いと思わねえ?」
雑誌には、大正時代を思わせるような、古民家風の温泉宿の写真が載っていました。
「確かに良いな」
「だろ?」
「お前こういうの好きなのか」
江戸屋敷のような所に住んでいる為、和風な雰囲気を漂わせるものには飽き飽きしてるのではと思っていたのです。
「大正ロマンっての?無いじゃん、こういうのあんまり。和風の中にも洋風が掛け合わされたみたいなさ。外国の文化が入り混じってる感じの。このステンドグラスとか、白壁に彫ってある文様とか、レトロな照明とか。ちゃんと手入れがされてて綺麗だし。何かもう、全ての要素がオレ好み」
と、慎吾は満足げに特集ページを改めて見やったのでした。
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切るところが見当らなくて長めになっちゃいますが。
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