だらだらと。
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暫くして、怒涛の年末がやってきました。まずはクリスマス会です。その日は意地で仕事を終わらせ、慌てて会社を後にします。「彼女と約束でもあるのか?」などと囃し立てられましたが、和己にとって、そんな楽しいイベントでは勿論ありません。
組に戻るとすぐ食事のセッティングから座布団の用意、ツリーの飾りつけ、ビンゴゲームの商品の用意など、忙しく動き回ります。勿論他の組員も手伝いますが、やはり一番働かねばならない立場です。実際に会が始まった頃には組員の中で一番疲労の色を濃くしていました。
後は適当に食べていよう、と末席でのんびりしていましたが、こういった場でそういうわけにも行かないのが現実でした。酒の酌をされ、返杯をし、と何かと落ち着きません。またこのクリスマス会は組の中で人気があるのか、非常勤組員も参加し、総勢五十人以上が広間に集まっていたのでした。
クリスマス会は深夜に及び、しかしまだまだ終わる気配がありませんでした。疲労と酒のダブルパンチでダウン寸前の和己は、広間の角に凭れ掛かって天井の辺りを、焦点が定まらないまま眺めていました。
「和己」
誰かが呼んだ、とぼうっとする頭で反応し、近くに焦点を合わせると、こちらを覗き込んでいる一吾の顔がありました。
「大丈夫か。もう下がっていいぞ。ご苦労だったな」
その言葉は天使の声に聞こえました。辛うじて礼を言い、フラフラになりながら広間を後にしたのでした。
着替えるのも、歯を磨くのも面倒臭い、とにかく早く横になりたい。そんな思いで部屋の扉を開けると、何故か布団が既にしかれており、しかもそこで横になっていたのは慎吾でした。
「おっせーよ。待ってたのによ」
慎吾の文句も右から左へ通り抜けていきます。上着を脱ぎ、掛け布団をめくって潜り込みます。
「狭い」
慎吾が待っていたことに対しては全くの無反応で、文句だけを短く言うと、そのまま寝入ろうとします。
「ちょ、おい!寝んなよテメ」
「……」
既に返事も返ってきません。これでは何の為に待っていたのか分からない、と慎吾は一人憤慨します。その時でした。
「おお~い和己ィ!!」
酔っ払いの大声が襖の外から聞こえてきたのでした。
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>大/奥の新刊を読みました。
面白いですが、内容はどうしても暗くならざるを得ないので、そろそろ吉宗ベースの話に戻って欲しいな、と思ってたら出てきてくれて嬉しかったです。
ちなみにア/イシ/ールド21新刊は地元本屋に置いてなくて残念でした。珍しくないですけど、明日には置いてて欲しいなと。最終回は本誌で呼んだので、書き下ろしを楽しみにしてます。描かれてなかった色々が見れたら嬉しいんですが。
暫くして、怒涛の年末がやってきました。まずはクリスマス会です。その日は意地で仕事を終わらせ、慌てて会社を後にします。「彼女と約束でもあるのか?」などと囃し立てられましたが、和己にとって、そんな楽しいイベントでは勿論ありません。
組に戻るとすぐ食事のセッティングから座布団の用意、ツリーの飾りつけ、ビンゴゲームの商品の用意など、忙しく動き回ります。勿論他の組員も手伝いますが、やはり一番働かねばならない立場です。実際に会が始まった頃には組員の中で一番疲労の色を濃くしていました。
後は適当に食べていよう、と末席でのんびりしていましたが、こういった場でそういうわけにも行かないのが現実でした。酒の酌をされ、返杯をし、と何かと落ち着きません。またこのクリスマス会は組の中で人気があるのか、非常勤組員も参加し、総勢五十人以上が広間に集まっていたのでした。
クリスマス会は深夜に及び、しかしまだまだ終わる気配がありませんでした。疲労と酒のダブルパンチでダウン寸前の和己は、広間の角に凭れ掛かって天井の辺りを、焦点が定まらないまま眺めていました。
「和己」
誰かが呼んだ、とぼうっとする頭で反応し、近くに焦点を合わせると、こちらを覗き込んでいる一吾の顔がありました。
「大丈夫か。もう下がっていいぞ。ご苦労だったな」
その言葉は天使の声に聞こえました。辛うじて礼を言い、フラフラになりながら広間を後にしたのでした。
着替えるのも、歯を磨くのも面倒臭い、とにかく早く横になりたい。そんな思いで部屋の扉を開けると、何故か布団が既にしかれており、しかもそこで横になっていたのは慎吾でした。
「おっせーよ。待ってたのによ」
慎吾の文句も右から左へ通り抜けていきます。上着を脱ぎ、掛け布団をめくって潜り込みます。
「狭い」
慎吾が待っていたことに対しては全くの無反応で、文句だけを短く言うと、そのまま寝入ろうとします。
「ちょ、おい!寝んなよテメ」
「……」
既に返事も返ってきません。これでは何の為に待っていたのか分からない、と慎吾は一人憤慨します。その時でした。
「おお~い和己ィ!!」
酔っ払いの大声が襖の外から聞こえてきたのでした。
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>大/奥の新刊を読みました。
面白いですが、内容はどうしても暗くならざるを得ないので、そろそろ吉宗ベースの話に戻って欲しいな、と思ってたら出てきてくれて嬉しかったです。
ちなみにア/イシ/ールド21新刊は地元本屋に置いてなくて残念でした。珍しくないですけど、明日には置いてて欲しいなと。最終回は本誌で呼んだので、書き下ろしを楽しみにしてます。描かれてなかった色々が見れたら嬉しいんですが。
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和己が組に入ってから、八ヶ月以上が過ぎていました。季節は既に冬を向かえ、土日に課される屋敷の掃除(特に床の雑巾がけ)が身に堪える時期です。それに加え、兄貴分の久保からは、年始年末は特に忙しいからしっかり働くようにと言われていました。
「会社の忘年会もあるし大変そうだなぁ…」
ついつい、深夜の慎吾の部屋でボヤきます。
「まあな。組の行事だけでもクリスマス会だろ、忘年会だろ、大掃除に正月も待ってるしな」
「待て、クリスマス会?」
うっかり聞き逃しそうになりましたが、ヤクザらしからぬイベントが混じっていました。
「うん、クリスマス会。でっかいツリー飾るから。それとプレゼント交換もするし。お前も何か用意しとけよ」
慎吾は平然として言いました。
「ヤクザがクリスマス会とかすんのか?キリストの行事だぞ」
「あぁ、あんまそういうの関係無えから。要は楽しむためのイベントだろ?」
そんな事を言われても、いかつい組員達がクリスマスツリーに飾り付けをし、チキンを食べつつプレゼント交換をする、という図はあまりに違和感がありました。
「じゃあ、姐さんや一吾さんも参加すんのか?その会に」
どうにも違和感は拭えません。
「兄貴は途中参加かな。酒の差し入れして、暫く飲んだら下がっちまうな、部屋に。お袋は…どうだろ。ちょっと覗きに来るぐらいか。ちなみにオレはバリバリ参加すっけど」
「マジでか」
「マジで」
そもそも一体どんなプレゼントを用意すれば良いのか、全く検討も付きません。その筋の人間が喜ぶものといったら、酒やタバコぐらいしか思い浮かびませんでした。しかし酒は既に用意されているでしょうし、タバコは人によって好みもバラバラです。そもそもプレゼントとしてタバコというのも微妙だと思いました。
「何を用意すりゃ良いんだ…。さっぱり検討もつかねえよ」
「去年なんかはDVDプレーヤーとか喜ばれたけどな」
「家電かよ。高ぇなぁ」
「後は時計とか。妙に派手な」
「ますます高え」
「ネクタイとかで良いんじゃね?一番下っ端なんだから許してもらえるだろ。あ、でも派手なのにしとけよ。基本、金とか銀が好きだから。そこを押さえときゃ大丈夫だろ、多分」
慎吾に有り難いアドバイスを貰い、和己はほっと胸を撫で下ろしたのでした。
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というわけで、六月以来の「お慎」更新です。
何となく書き始めたのに、長くなってしまいました。まだ終われそうに無いのですが、最後まで書けたらいいなと思ってます。
オリジナル要素が強くて申し訳ないですが。
更新は飛び飛びになるかと思います。
長く創作物の更新がストップしてましたが、サイトを覗きに来て下さる方には感謝感謝です。
和己が組に入ってから、八ヶ月以上が過ぎていました。季節は既に冬を向かえ、土日に課される屋敷の掃除(特に床の雑巾がけ)が身に堪える時期です。それに加え、兄貴分の久保からは、年始年末は特に忙しいからしっかり働くようにと言われていました。
「会社の忘年会もあるし大変そうだなぁ…」
ついつい、深夜の慎吾の部屋でボヤきます。
「まあな。組の行事だけでもクリスマス会だろ、忘年会だろ、大掃除に正月も待ってるしな」
「待て、クリスマス会?」
うっかり聞き逃しそうになりましたが、ヤクザらしからぬイベントが混じっていました。
「うん、クリスマス会。でっかいツリー飾るから。それとプレゼント交換もするし。お前も何か用意しとけよ」
慎吾は平然として言いました。
「ヤクザがクリスマス会とかすんのか?キリストの行事だぞ」
「あぁ、あんまそういうの関係無えから。要は楽しむためのイベントだろ?」
そんな事を言われても、いかつい組員達がクリスマスツリーに飾り付けをし、チキンを食べつつプレゼント交換をする、という図はあまりに違和感がありました。
「じゃあ、姐さんや一吾さんも参加すんのか?その会に」
どうにも違和感は拭えません。
「兄貴は途中参加かな。酒の差し入れして、暫く飲んだら下がっちまうな、部屋に。お袋は…どうだろ。ちょっと覗きに来るぐらいか。ちなみにオレはバリバリ参加すっけど」
「マジでか」
「マジで」
そもそも一体どんなプレゼントを用意すれば良いのか、全く検討も付きません。その筋の人間が喜ぶものといったら、酒やタバコぐらいしか思い浮かびませんでした。しかし酒は既に用意されているでしょうし、タバコは人によって好みもバラバラです。そもそもプレゼントとしてタバコというのも微妙だと思いました。
「何を用意すりゃ良いんだ…。さっぱり検討もつかねえよ」
「去年なんかはDVDプレーヤーとか喜ばれたけどな」
「家電かよ。高ぇなぁ」
「後は時計とか。妙に派手な」
「ますます高え」
「ネクタイとかで良いんじゃね?一番下っ端なんだから許してもらえるだろ。あ、でも派手なのにしとけよ。基本、金とか銀が好きだから。そこを押さえときゃ大丈夫だろ、多分」
慎吾に有り難いアドバイスを貰い、和己はほっと胸を撫で下ろしたのでした。
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というわけで、六月以来の「お慎」更新です。
何となく書き始めたのに、長くなってしまいました。まだ終われそうに無いのですが、最後まで書けたらいいなと思ってます。
オリジナル要素が強くて申し訳ないですが。
更新は飛び飛びになるかと思います。
長く創作物の更新がストップしてましたが、サイトを覗きに来て下さる方には感謝感謝です。
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「小さい頃はあんなに可愛かったのに…」
やがて慎吾は成長します。月に一度程度しか家に戻らない悟にとっては、それがとても早いように感じられたのでした。
慎吾が十歳になった頃、久しぶりに遊園地に行こうかと悟が誘うと、友達と約束してるとすげなく断られたのでした。
『てゆーか、今時親と遊園地とかいかねーし』
そう言ってさっさと出て行ってしまいました。
「もう僕はあまりの豹変ぶりにどうしていいのかと思ったよ」
「第一次反抗期ですよ、あなた」
冷静に一子は教えます。
「中学に上がったら上がったで野球ばっかりするようになって。しかも彼女まで出来たとかいうから家に連れておいで、って優しく言ったのに」
『こんな家連れてこれるわけねーじゃん。馬鹿みてえ』
慎吾はいっそう冷め切った目で吐き捨てたのでした。
「僕はただ立ち尽くすしか出来なかったよ…」
思い出したのか、涙を少し溜めて弱弱しく言います。
「第二次反抗期ですよ、あなた」
「でも、高校に上がってからようやく落ち着いて、いつの間にか身長も伸びて、あぁこれで男同士の話も出来るななんて思っていたのにだよ?」
高校を卒業したと思ったら何と、図体の大きな男の恋人を連れてきたのでした。
「この時ばかりは天地がひっくり返るぐらいの衝撃を受けたよ。正直、あの男を海に沈めても良いぐらいの出来事だと思った。というより父親としてやるべきなんじゃないかってね」
「まぁ、驚くのは分かりますけど。私だってさすがに度肝を抜かれましたし。でも父親として海に沈めるって発想は一般的ではありませんよ」
悟の発言に突っ込みつつも、やはりその時ばかりは表面上冷静に装っていた一子でさえ、常識から逸脱した状況に、戸惑いを覚えていたのでした。
「それでも時間というのは偉大ですね。二人の気持ちを見極める為に設けた四年間でしたけど、同時に私達が冷静に考える猶予期間でもあったんだと思います。これだけ強く想い合っているのなら、これ以上口を挟む事も無いんじゃないかと思えるんですよ」
しかし、これには悟は反論します。
「一子さんはそんな風に思えるかもしれないけど、僕は納得できないな。その後の河合の不遜な行動は何だ。勝手にウチに入社を決めて、しれっと報告して、こっちの怒りが頂点に達すると、すかさず慎吾を思うが為だみたいなしおらしい態度と言葉で丸め込もうとする。でもやってる事はこっちに喧嘩を売ってるようなもんだっただろう!」
「私には策士振りを寧ろ褒めているように聞こえますよ」
「褒めてない!」
ムキになって言い返します。
「でも、河合さんの働きぶりは真面目ですよ」
「それもヤツの作戦なんだ!」
すると、ふう、と一子は溜息を付きました。
「あなた、悔しいだけなんでしょ。慎吾を取られたみたいで」
「悪いか!」
「悪くないですよ」
くすくすと楽しそうに一子は笑うのでした。
----------------------------------------------------
>先日は思ったとおりの筋肉痛に見舞われまして。
今は大分元通りになりました。
ですが今日は張り切って手作り餃子とか作ってたら疲れました。
>昨日ジャンプを立ち読みしたら、ア/イシー/ルド21が打ち切られてたのでびっくりしました。確かに随分後ろの位置に掲載されてるな…とは思ってましたが、長い間ジャンプの一戦力として安定していただけに。そんなに人気がガタ落ちしたのかと。
そして蛭魔の父親等々については判明したのかどうかが気になります。そこ解決して無いとちょっと無いだろ…と思うのですが。
>バ/クマ/ン。も大分後ろの位置にありましたし。
まぁ内容(というか展開?)が地味なんですかね…。好きなんですけど。
エイジのキャラが、最初こそなんだこりゃと思いましたけど、可愛くていいキャラに育ってるなと。
>ジャンプは知らないマンガが気付いたら沢山あって、もう全然分かりません。
>お慎
長々と書いてると段々、伏線とか設定を忘れそうになります。
>和さん誕生日をスルーしちゃってましたが、おめでと~
「小さい頃はあんなに可愛かったのに…」
やがて慎吾は成長します。月に一度程度しか家に戻らない悟にとっては、それがとても早いように感じられたのでした。
慎吾が十歳になった頃、久しぶりに遊園地に行こうかと悟が誘うと、友達と約束してるとすげなく断られたのでした。
『てゆーか、今時親と遊園地とかいかねーし』
そう言ってさっさと出て行ってしまいました。
「もう僕はあまりの豹変ぶりにどうしていいのかと思ったよ」
「第一次反抗期ですよ、あなた」
冷静に一子は教えます。
「中学に上がったら上がったで野球ばっかりするようになって。しかも彼女まで出来たとかいうから家に連れておいで、って優しく言ったのに」
『こんな家連れてこれるわけねーじゃん。馬鹿みてえ』
慎吾はいっそう冷め切った目で吐き捨てたのでした。
「僕はただ立ち尽くすしか出来なかったよ…」
思い出したのか、涙を少し溜めて弱弱しく言います。
「第二次反抗期ですよ、あなた」
「でも、高校に上がってからようやく落ち着いて、いつの間にか身長も伸びて、あぁこれで男同士の話も出来るななんて思っていたのにだよ?」
高校を卒業したと思ったら何と、図体の大きな男の恋人を連れてきたのでした。
「この時ばかりは天地がひっくり返るぐらいの衝撃を受けたよ。正直、あの男を海に沈めても良いぐらいの出来事だと思った。というより父親としてやるべきなんじゃないかってね」
「まぁ、驚くのは分かりますけど。私だってさすがに度肝を抜かれましたし。でも父親として海に沈めるって発想は一般的ではありませんよ」
悟の発言に突っ込みつつも、やはりその時ばかりは表面上冷静に装っていた一子でさえ、常識から逸脱した状況に、戸惑いを覚えていたのでした。
「それでも時間というのは偉大ですね。二人の気持ちを見極める為に設けた四年間でしたけど、同時に私達が冷静に考える猶予期間でもあったんだと思います。これだけ強く想い合っているのなら、これ以上口を挟む事も無いんじゃないかと思えるんですよ」
しかし、これには悟は反論します。
「一子さんはそんな風に思えるかもしれないけど、僕は納得できないな。その後の河合の不遜な行動は何だ。勝手にウチに入社を決めて、しれっと報告して、こっちの怒りが頂点に達すると、すかさず慎吾を思うが為だみたいなしおらしい態度と言葉で丸め込もうとする。でもやってる事はこっちに喧嘩を売ってるようなもんだっただろう!」
「私には策士振りを寧ろ褒めているように聞こえますよ」
「褒めてない!」
ムキになって言い返します。
「でも、河合さんの働きぶりは真面目ですよ」
「それもヤツの作戦なんだ!」
すると、ふう、と一子は溜息を付きました。
「あなた、悔しいだけなんでしょ。慎吾を取られたみたいで」
「悪いか!」
「悪くないですよ」
くすくすと楽しそうに一子は笑うのでした。
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>先日は思ったとおりの筋肉痛に見舞われまして。
今は大分元通りになりました。
ですが今日は張り切って手作り餃子とか作ってたら疲れました。
>昨日ジャンプを立ち読みしたら、ア/イシー/ルド21が打ち切られてたのでびっくりしました。確かに随分後ろの位置に掲載されてるな…とは思ってましたが、長い間ジャンプの一戦力として安定していただけに。そんなに人気がガタ落ちしたのかと。
そして蛭魔の父親等々については判明したのかどうかが気になります。そこ解決して無いとちょっと無いだろ…と思うのですが。
>バ/クマ/ン。も大分後ろの位置にありましたし。
まぁ内容(というか展開?)が地味なんですかね…。好きなんですけど。
エイジのキャラが、最初こそなんだこりゃと思いましたけど、可愛くていいキャラに育ってるなと。
>ジャンプは知らないマンガが気付いたら沢山あって、もう全然分かりません。
>お慎
長々と書いてると段々、伏線とか設定を忘れそうになります。
>和さん誕生日をスルーしちゃってましたが、おめでと~
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部屋、というには広すぎる室内で、戸を開けっ放しにして悟は中庭を眺めます。午前中は休むと決め、のんびりとした良い気分の中で一子に膝枕されながら、つかの間の自由を噛み締めます。
「一子さん、まだ二人がちっちゃかった頃の事覚えてる?」
「いつの話です?」
穏やかに一子は先を促します。悟は半ば独り言のように続けます。
「一吾と慎吾と裕樹がさ、まだ五、六歳の頃だったかなぁ。三人で中庭でかくれんぼしてて。その時、今みたいに部屋からそれを眺めてたんだ、二人で。一吾が鬼で二人が隠れたんだ。中庭も広いから時間がかかったんだけど暫くして裕樹は見つかって。だけどいつまで経っても慎吾が見つからなかった。段々と嫌な予感がして。一吾も裕樹も不安な顔になって。もしかして池にでも落ちたんじゃないかって。
悟がまさに今朝感じたように、背中が寒くなるような感覚に襲われたのでした。
「あぁ、覚えてますよ。あの子はちょっと放浪癖があるのかもしれませんね」
おかしそうに一子が後を続けます。
「皆が心配し始めた時、何事も無かったみたいに裏庭に続く細道から慎吾がトコトコ歩いてくるんですから」
「そうそう。一吾は『かくれんぼは中庭の中だけだって決めただろ』って物凄く怒ってた。慎吾は頭をゲンコツで殴られて泣きそうになって、でも口をへの字にして堪えてたな」
その光景を思い出したのか、どこか遠い所を見るように悟は目を細めました。
「その慎吾が、何か両手に持ってるなと思ったら、こっちに走ってきて、『お父さんにあげる』って言ったんだ。両手一杯のドングリを」
慎吾はかくれる所を探しているうちに、裏庭へ続く細道にドングリが落ちているのに気がついたのでした。その後はドングリの事で頭が一杯になり、夢中になって裏庭で拾っていたのです。
『あげるけど全部取ったら駄目だよ。お兄ちゃんと裕樹にもあげるから』
そう言った慎吾は何て可愛いのだろうと、先ごろまでの心配を他所に思ったのでした。
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部屋、というには広すぎる室内で、戸を開けっ放しにして悟は中庭を眺めます。午前中は休むと決め、のんびりとした良い気分の中で一子に膝枕されながら、つかの間の自由を噛み締めます。
「一子さん、まだ二人がちっちゃかった頃の事覚えてる?」
「いつの話です?」
穏やかに一子は先を促します。悟は半ば独り言のように続けます。
「一吾と慎吾と裕樹がさ、まだ五、六歳の頃だったかなぁ。三人で中庭でかくれんぼしてて。その時、今みたいに部屋からそれを眺めてたんだ、二人で。一吾が鬼で二人が隠れたんだ。中庭も広いから時間がかかったんだけど暫くして裕樹は見つかって。だけどいつまで経っても慎吾が見つからなかった。段々と嫌な予感がして。一吾も裕樹も不安な顔になって。もしかして池にでも落ちたんじゃないかって。
悟がまさに今朝感じたように、背中が寒くなるような感覚に襲われたのでした。
「あぁ、覚えてますよ。あの子はちょっと放浪癖があるのかもしれませんね」
おかしそうに一子が後を続けます。
「皆が心配し始めた時、何事も無かったみたいに裏庭に続く細道から慎吾がトコトコ歩いてくるんですから」
「そうそう。一吾は『かくれんぼは中庭の中だけだって決めただろ』って物凄く怒ってた。慎吾は頭をゲンコツで殴られて泣きそうになって、でも口をへの字にして堪えてたな」
その光景を思い出したのか、どこか遠い所を見るように悟は目を細めました。
「その慎吾が、何か両手に持ってるなと思ったら、こっちに走ってきて、『お父さんにあげる』って言ったんだ。両手一杯のドングリを」
慎吾はかくれる所を探しているうちに、裏庭へ続く細道にドングリが落ちているのに気がついたのでした。その後はドングリの事で頭が一杯になり、夢中になって裏庭で拾っていたのです。
『あげるけど全部取ったら駄目だよ。お兄ちゃんと裕樹にもあげるから』
そう言った慎吾は何て可愛いのだろうと、先ごろまでの心配を他所に思ったのでした。
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約一ヶ月ぶりに、島崎家は広間で朝食を囲みます。
「じゃあ、昨日は下総さんとは上手く行ったんだな?でも向こうは組長直々に出向いてきたのに僕が挨拶しなくていいんだろうか」
「元はといえば向こうが発端ですから気にする必要はありません」
普段と変わらぬ様子で、一吾は味噌汁を啜りながら答えます。
「そっか…。一吾がいつもしっかり組を取り仕切ってくれるから、助かるよ。安心して働いてられる」
早朝の始終パニックに陥った様子とは一転してそんな言葉を掛けられ、暫し一吾は呆然とします。しかし嬉しくもあったので照れつつ「いえ」とだけ返しました。
「ところでもう二十代後半だろ?彼女の一人や二人はいないの」
「特にいないですね」
冷静に返す一吾に対し慎吾は「(特定じゃない彼女の三、四人はいるみてえだけどな)」と思うだけに留めます。
「一吾ぐらいの年には僕たちもう結婚して二人とも生まれてたからなぁ。心配だよ」
白ご飯を一口食べ、一吾を見やりますが、まったく意に介する様子も無く淡々と食事を進めているのでした。
「あの河合はどうなの。お父さん全然知らないけどちゃんとやってんの?」
「え、まぁ、そりゃ…」
あまり聞かれたくない話題を振られて、慎吾は少ししどろもどろになります。
「会社での様子は知りませんけど、土日は自分の時間を犠牲にして、屋敷で働いてくれてますよ」
一子がフォローを入れました。
「そっか。…ふーん、そうなのか」
考えながら、どっちつかずの様子で受け答えします。親父は今現在和己の事を、自分達の事をどう思っているのかと慎吾は考えますが、こちらから話題を振って、やぶ蛇にでもなってはかなわないと思うのでした。
その日の島崎家の朝食は、ぎこちないながらも悪くない雰囲気の中進んだのでした。
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約一ヶ月ぶりに、島崎家は広間で朝食を囲みます。
「じゃあ、昨日は下総さんとは上手く行ったんだな?でも向こうは組長直々に出向いてきたのに僕が挨拶しなくていいんだろうか」
「元はといえば向こうが発端ですから気にする必要はありません」
普段と変わらぬ様子で、一吾は味噌汁を啜りながら答えます。
「そっか…。一吾がいつもしっかり組を取り仕切ってくれるから、助かるよ。安心して働いてられる」
早朝の始終パニックに陥った様子とは一転してそんな言葉を掛けられ、暫し一吾は呆然とします。しかし嬉しくもあったので照れつつ「いえ」とだけ返しました。
「ところでもう二十代後半だろ?彼女の一人や二人はいないの」
「特にいないですね」
冷静に返す一吾に対し慎吾は「(特定じゃない彼女の三、四人はいるみてえだけどな)」と思うだけに留めます。
「一吾ぐらいの年には僕たちもう結婚して二人とも生まれてたからなぁ。心配だよ」
白ご飯を一口食べ、一吾を見やりますが、まったく意に介する様子も無く淡々と食事を進めているのでした。
「あの河合はどうなの。お父さん全然知らないけどちゃんとやってんの?」
「え、まぁ、そりゃ…」
あまり聞かれたくない話題を振られて、慎吾は少ししどろもどろになります。
「会社での様子は知りませんけど、土日は自分の時間を犠牲にして、屋敷で働いてくれてますよ」
一子がフォローを入れました。
「そっか。…ふーん、そうなのか」
考えながら、どっちつかずの様子で受け答えします。親父は今現在和己の事を、自分達の事をどう思っているのかと慎吾は考えますが、こちらから話題を振って、やぶ蛇にでもなってはかなわないと思うのでした。
その日の島崎家の朝食は、ぎこちないながらも悪くない雰囲気の中進んだのでした。
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