だらだらと。
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当日の日曜は、駅までタクシーで山ノ井を迎えに行くことになりました。運転手付きの車で出迎えるのも大仰で、かといって歩いていくには遠かったからです。
「慎吾老けた?」
駅前に姿を現した山ノ井は開口一番そう言いました。
「ちょっと待ってよ。酷くね?久しぶりの再会なのに、いきなりそれかよ」
「酷いのは慎吾でしょ。何なの。殆ど音信不通でさ」
「まぁ、結構忙しかったんだよ」
その話になるとどうしても不利になってしまう為、話題を変え、とにかくタクシーに乗せてしまう事にしました。幸いにも山ノ井は余りツッコんだ話題を振ってきませんでした。どうでもいい雑談ばかりをします。
そして、例の叔父の家に到着しました。にも関わらず、山ノ井はタクシーから降りようとしません。
「違うでしょ慎吾」
「…何が」
意味が分からず、問い返しつつも、何か勘付かれるような事をしただろうかと記憶を探ります。
「オレは本当の慎吾の家に行きたいの。運転手さん、ここに行って下さい」
ズボンのポケットから小さく折り畳んだ紙切れを渡します。
「慎吾、観念してよ。全部分かってるから」
そう言うと、にっこり笑ったのでした。
「言ってる意味が分かんねーんだけど」
慎吾は声のトーンを明らかに落とし、山ノ井を少しの威圧感と共に見返します。
「あぁ、そういう顔するんだ。初めて見た」
しかし全く動じることなく、寧ろ興味深げに返してきます。
「悪いけど、このまま帰ってくんねーかな。話になんねーし」
すると山ノ井は溜息を付き「外で話そうか」とタクシーは待たせたままの状態にし、降りるように促したのでした。
「まず分かって欲しいんだけど、オレに悪意は無いから。慎吾の害になるようなことをするつもりは無いし」
慎吾は黙ったままでした。まだ真意が分からないからです。
「本当は、慎吾の部屋ででも華麗に打ち明けたかったんだよね。そんでちょっと驚いて欲しかった。…でも当然か。そんなすんなり連れて行ってくれるわけないよねぇ、組に」
山ノ井の言葉にぴくりと眉を動かしますが、まだ口を出すには早く、黙って喋らせます。
「オレの進路知ってる?…っていうか、誰とも連絡取ってないみたいだから知らないよね」
そう言うと山ノ井は敬礼のポーズを取り、茶目っ気たっぷりに言い放ったのでした。
「実は警察官になりました!」
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拍手とか、暖かいコメント有難うございました。
もう暫く続くかと思いますが、お付き合いくださいませ!
当日の日曜は、駅までタクシーで山ノ井を迎えに行くことになりました。運転手付きの車で出迎えるのも大仰で、かといって歩いていくには遠かったからです。
「慎吾老けた?」
駅前に姿を現した山ノ井は開口一番そう言いました。
「ちょっと待ってよ。酷くね?久しぶりの再会なのに、いきなりそれかよ」
「酷いのは慎吾でしょ。何なの。殆ど音信不通でさ」
「まぁ、結構忙しかったんだよ」
その話になるとどうしても不利になってしまう為、話題を変え、とにかくタクシーに乗せてしまう事にしました。幸いにも山ノ井は余りツッコんだ話題を振ってきませんでした。どうでもいい雑談ばかりをします。
そして、例の叔父の家に到着しました。にも関わらず、山ノ井はタクシーから降りようとしません。
「違うでしょ慎吾」
「…何が」
意味が分からず、問い返しつつも、何か勘付かれるような事をしただろうかと記憶を探ります。
「オレは本当の慎吾の家に行きたいの。運転手さん、ここに行って下さい」
ズボンのポケットから小さく折り畳んだ紙切れを渡します。
「慎吾、観念してよ。全部分かってるから」
そう言うと、にっこり笑ったのでした。
「言ってる意味が分かんねーんだけど」
慎吾は声のトーンを明らかに落とし、山ノ井を少しの威圧感と共に見返します。
「あぁ、そういう顔するんだ。初めて見た」
しかし全く動じることなく、寧ろ興味深げに返してきます。
「悪いけど、このまま帰ってくんねーかな。話になんねーし」
すると山ノ井は溜息を付き「外で話そうか」とタクシーは待たせたままの状態にし、降りるように促したのでした。
「まず分かって欲しいんだけど、オレに悪意は無いから。慎吾の害になるようなことをするつもりは無いし」
慎吾は黙ったままでした。まだ真意が分からないからです。
「本当は、慎吾の部屋ででも華麗に打ち明けたかったんだよね。そんでちょっと驚いて欲しかった。…でも当然か。そんなすんなり連れて行ってくれるわけないよねぇ、組に」
山ノ井の言葉にぴくりと眉を動かしますが、まだ口を出すには早く、黙って喋らせます。
「オレの進路知ってる?…っていうか、誰とも連絡取ってないみたいだから知らないよね」
そう言うと山ノ井は敬礼のポーズを取り、茶目っ気たっぷりに言い放ったのでした。
「実は警察官になりました!」
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もう暫く続くかと思いますが、お付き合いくださいませ!
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