だらだらと。
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「明君が話があるっていうんだよ、二人で。でさ、どうしてそんなに組運営は上手くいってるんですか、ってちょっとしつこかったわけ。でも言うわけにいかないでしょ。まさか会社やってますなんて。やっぱヤクっすかとか、振り込め詐欺大々的に始めたんすか、とかさ。そこは否定したんだけど。話してるうちにヤクザの将来性について熱く語り始めてさ、その内お先真っ暗だとか、優秀な弟に自分は将来の組長の座も奪われるんだとか、愚痴になっちゃったわけ。この時点でマジ帰りたかったんだけど。何かちょっとウルウルしちゃってるしさ」
「……」
「帰っても良いか聞いてみたんだけど駄目って言うし。それどころか、組運営について話すまでは帰ってもらうわけに行かないとか言ってさ。もし帰った興信所使ってオレの事調べ上げるとか何とか言い出して。やべーじゃん、勤めてる事バレたら。したらここじゃ落ち着かないから二人でしゃべれるトコ行きましょうとか言うからさ。しょうがなく着いて行ったワケ」
「ついて行くな馬鹿」
「いやだって、オレに何かしたらマジ戦争になっちゃう事ぐらい分かってるだろうと思うしさ」
「大体ちょっと調べられたぐらいじゃ分からないようにはなってる」
「そうなの?」
「組にとっても会社にとってもヤバイ橋渡ってるわけだからな。それで?」
「そうなら言ってくれよもう。まぁそんで、何かアパートに辿り着いたんだけど、歩いてる間に段々冷静になったのか、”慎吾さん脅してこんなトコ連れてきたってバレたら親父にぶっとばされる”とか言い出して。正直ぶっとばされる所の話じゃねーだろ思ったけどさ。”オレはもう駄目だ”とか、”これだから弟に差付けられるんだ、親父がオレを見て溜息付くんだ”とか。ぶっちゃけそれも仕方ないんじゃないかと思ったけど、既に二時間ぐれー経ってたし、騒ぎに絶対なってっし。若干同情してさ。二人で仲良く帰れば良いんじゃね?って結論に最終的になったんだけど」
「携帯は」
「会社の着信履歴とか色々入ってっから探られたらヤベーと思って、歩いてる途中で適当に捨ててきた。後で拾ってくるわ」
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「明君が話があるっていうんだよ、二人で。でさ、どうしてそんなに組運営は上手くいってるんですか、ってちょっとしつこかったわけ。でも言うわけにいかないでしょ。まさか会社やってますなんて。やっぱヤクっすかとか、振り込め詐欺大々的に始めたんすか、とかさ。そこは否定したんだけど。話してるうちにヤクザの将来性について熱く語り始めてさ、その内お先真っ暗だとか、優秀な弟に自分は将来の組長の座も奪われるんだとか、愚痴になっちゃったわけ。この時点でマジ帰りたかったんだけど。何かちょっとウルウルしちゃってるしさ」
「……」
「帰っても良いか聞いてみたんだけど駄目って言うし。それどころか、組運営について話すまでは帰ってもらうわけに行かないとか言ってさ。もし帰った興信所使ってオレの事調べ上げるとか何とか言い出して。やべーじゃん、勤めてる事バレたら。したらここじゃ落ち着かないから二人でしゃべれるトコ行きましょうとか言うからさ。しょうがなく着いて行ったワケ」
「ついて行くな馬鹿」
「いやだって、オレに何かしたらマジ戦争になっちゃう事ぐらい分かってるだろうと思うしさ」
「大体ちょっと調べられたぐらいじゃ分からないようにはなってる」
「そうなの?」
「組にとっても会社にとってもヤバイ橋渡ってるわけだからな。それで?」
「そうなら言ってくれよもう。まぁそんで、何かアパートに辿り着いたんだけど、歩いてる間に段々冷静になったのか、”慎吾さん脅してこんなトコ連れてきたってバレたら親父にぶっとばされる”とか言い出して。正直ぶっとばされる所の話じゃねーだろ思ったけどさ。”オレはもう駄目だ”とか、”これだから弟に差付けられるんだ、親父がオレを見て溜息付くんだ”とか。ぶっちゃけそれも仕方ないんじゃないかと思ったけど、既に二時間ぐれー経ってたし、騒ぎに絶対なってっし。若干同情してさ。二人で仲良く帰れば良いんじゃね?って結論に最終的になったんだけど」
「携帯は」
「会社の着信履歴とか色々入ってっから探られたらヤベーと思って、歩いてる途中で適当に捨ててきた。後で拾ってくるわ」
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時刻は既に、十一時を回った頃でした。島崎組の組員、下総組の組長と幹部数人が息を詰めて報告を待つ中、一吾の携帯が鳴りました。
「もしもし」
『あ、オレオレ」
「慎吾か?!」
『うんそう、慎吾』
およそ二時間に渡った緊張感に似つかわしくない慎吾ののんびりとした声が、通話口から聞こえてきます。どうも事態は思ったほどの事では無かったようだと一吾は判断しますが、腹の虫は収まりません。
「テメェ今どこにいやがんだ、あ?事と次第によっちゃただじゃすまねえぞコラ」
『いや、色々あったんだって。それでさ、今からタクシーで戻るから。明君と一緒に。え~っと大体…ん?あ、三十分ぐらい?えっと三十分ぐらいで戻るわ。じゃ』
「待てコラ!」
しかしあっさりと通話は切られてしまいました。
慎吾はそれからきっかり三十分して、下総組の長男と共にタクシーで帰ってきました。和己達の心配もどこ吹く風といった、のほほんとした緊張感の無い顔で「ただいま」などと言う始末です。一吾に詰め寄られると「お騒がせして済みませんした」と一応の謝罪はしたものの、いまいち誠意が感じられず、和己は釈然としません。慎吾が視線を投げてきましたが、それを睨みつけて返したのでした。緊張と不安に包まれた時間を返せと言ってやりたい気分でした。
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時刻は既に、十一時を回った頃でした。島崎組の組員、下総組の組長と幹部数人が息を詰めて報告を待つ中、一吾の携帯が鳴りました。
「もしもし」
『あ、オレオレ」
「慎吾か?!」
『うんそう、慎吾』
およそ二時間に渡った緊張感に似つかわしくない慎吾ののんびりとした声が、通話口から聞こえてきます。どうも事態は思ったほどの事では無かったようだと一吾は判断しますが、腹の虫は収まりません。
「テメェ今どこにいやがんだ、あ?事と次第によっちゃただじゃすまねえぞコラ」
『いや、色々あったんだって。それでさ、今からタクシーで戻るから。明君と一緒に。え~っと大体…ん?あ、三十分ぐらい?えっと三十分ぐらいで戻るわ。じゃ』
「待てコラ!」
しかしあっさりと通話は切られてしまいました。
慎吾はそれからきっかり三十分して、下総組の長男と共にタクシーで帰ってきました。和己達の心配もどこ吹く風といった、のほほんとした緊張感の無い顔で「ただいま」などと言う始末です。一吾に詰め寄られると「お騒がせして済みませんした」と一応の謝罪はしたものの、いまいち誠意が感じられず、和己は釈然としません。慎吾が視線を投げてきましたが、それを睨みつけて返したのでした。緊張と不安に包まれた時間を返せと言ってやりたい気分でした。
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「あの~、明さん?」
「あ、なんスか」
「そろそろ帰りませんか。多分、騒ぎになってますけど」
「ですよね」
「下手すっと、お互いの組に亀裂が入りかねないっつーか。いやもうちょっと入っちゃってっかも」
「ですよね…。てか慎吾さん、帰ったら良いじゃないですか。別に縛ってるわけじゃないし、鍵も開いてるし、いつでも逃げられるじゃないスか」
「いやまあ、そうなんですけど。オレ一人で帰るより、二人で帰った方が事も穏やかに済むかなって」
「そうっすよね…すんません、何か気ィ使ってもらっちゃって」
「いやいーんスけど。つか減りましたね、腹」
「あ、もうすぐピザ届くんで…」
「じゃ、食ったら帰ります?」
「そうっすね」
「てか、この部屋って個人で借りてるんすか?」
「あー、ちょっと前まで彼女と住んでたんスけど、何か逃げられちゃって。最近借りたばっかだったんすよ。だから組の連中も知らないし。でも何が気に入らなかったのか全然分かんないんですよねー。何すかね、女って何考えてんのか分かんねっス」
「あー、まぁそうですね。あ、ピザ来たんじゃないですか?」
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「あの~、明さん?」
「あ、なんスか」
「そろそろ帰りませんか。多分、騒ぎになってますけど」
「ですよね」
「下手すっと、お互いの組に亀裂が入りかねないっつーか。いやもうちょっと入っちゃってっかも」
「ですよね…。てか慎吾さん、帰ったら良いじゃないですか。別に縛ってるわけじゃないし、鍵も開いてるし、いつでも逃げられるじゃないスか」
「いやまあ、そうなんですけど。オレ一人で帰るより、二人で帰った方が事も穏やかに済むかなって」
「そうっすよね…すんません、何か気ィ使ってもらっちゃって」
「いやいーんスけど。つか減りましたね、腹」
「あ、もうすぐピザ届くんで…」
「じゃ、食ったら帰ります?」
「そうっすね」
「てか、この部屋って個人で借りてるんすか?」
「あー、ちょっと前まで彼女と住んでたんスけど、何か逃げられちゃって。最近借りたばっかだったんすよ。だから組の連中も知らないし。でも何が気に入らなかったのか全然分かんないんですよねー。何すかね、女って何考えてんのか分かんねっス」
「あー、まぁそうですね。あ、ピザ来たんじゃないですか?」
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「この度は、ウチの馬鹿がとんでも無い事を…」
ほんの十日前に会った時に見た、あの大らかで鷹揚な気配は影を薄め、険しい表情のまま、下総組組長は一吾に頭を下げました。
「まだ何も分かっていません。まさか二人で心中したわけでもないでしょうから、その内帰って来るでしょう。ウチとしても古い付き合いのあるそちらさんと事を大きくしたくはありません。今も二人を探させてますから、全ては事態が収集した上で考えましょう。ところで」
「はい」
ばっ、と組長が顔を上げます。
「貴方の息子さんは、慎吾と二人で話したがっていたようですが、心当たりはありますか」
「それが…正直、どうしてなのか。確かに、島崎組を羨むような事は言っていましたが、何故弟さんなのかは」
「ウチを?」
「…えぇ、組を縮小されても未だ変わらぬ影響力を持っている…、更にとてもその、潤っているようだなどと。今や、どこの組も苦しいこの時勢に」
「なるほど」
島崎組を妬むような材料はあったようです。という事は、慎吾を恐らく脅したのもその辺についての事なのでしょうか。ただ、危害を加えるような程の事とも思えませんでした。和己は少し安堵し、しかし真相はまだはっきりしないのだと、緊張感を維持し、状況を見守るのでした。
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>ネットをふらふらしていたら、銀/魂の近受サーチを発見してしまって嬉しかったりしました。てっきりそんな傾向はゼロなのかと思ってましたよ。
でも愛されてるじゃないですか、隊士に。超。特に二名に。
いいなぁ…。
「この度は、ウチの馬鹿がとんでも無い事を…」
ほんの十日前に会った時に見た、あの大らかで鷹揚な気配は影を薄め、険しい表情のまま、下総組組長は一吾に頭を下げました。
「まだ何も分かっていません。まさか二人で心中したわけでもないでしょうから、その内帰って来るでしょう。ウチとしても古い付き合いのあるそちらさんと事を大きくしたくはありません。今も二人を探させてますから、全ては事態が収集した上で考えましょう。ところで」
「はい」
ばっ、と組長が顔を上げます。
「貴方の息子さんは、慎吾と二人で話したがっていたようですが、心当たりはありますか」
「それが…正直、どうしてなのか。確かに、島崎組を羨むような事は言っていましたが、何故弟さんなのかは」
「ウチを?」
「…えぇ、組を縮小されても未だ変わらぬ影響力を持っている…、更にとてもその、潤っているようだなどと。今や、どこの組も苦しいこの時勢に」
「なるほど」
島崎組を妬むような材料はあったようです。という事は、慎吾を恐らく脅したのもその辺についての事なのでしょうか。ただ、危害を加えるような程の事とも思えませんでした。和己は少し安堵し、しかし真相はまだはっきりしないのだと、緊張感を維持し、状況を見守るのでした。
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>ネットをふらふらしていたら、銀/魂の近受サーチを発見してしまって嬉しかったりしました。てっきりそんな傾向はゼロなのかと思ってましたよ。
でも愛されてるじゃないですか、隊士に。超。特に二名に。
いいなぁ…。
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慎吾が行方不明だと知った最初こそ驚き、うろたえた和己でしたが、暫くして冷静にならなければと心を落ち着けました。焦ったところでどうにもならないのです。
和己は考えます。偶然街で出会ったという事から、恐らく計画的な行動ではないと。慎吾と共に消えていたというのも、普通のカフェでの話ですから、暴力的な行動には向こうは出ていないはずです。だとすると慎吾は同意の下で付いていった事になります。では何故付いていかなければならなかったのか。何か言葉で脅される材料があったのでしょうか。ばらされて困ると言えば、何かの秘密事ですが、これについては分かりません。ヤクザの世界に付いては分からないことがまだ沢山ありますし、島崎組、下総組、両方の関係についても、悪くない付き合いがあるぐらいの知識しかありません。そして下総組といえば、組長が一吾を引き合いに出し”うちの馬鹿息子に比べたら雲泥の差だ”と言っていた事が思い出されます。それが事実だとすれば、考えなしに組長の息子が引き起こした騒動、という結論に辿り着くのでした。
しかし、慎吾は無事なのか、何処にいるのか、といった重要な事柄については何も分からないままです。おとなしく下総組組長が来るのを待つしかないようでした。
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慎吾が行方不明だと知った最初こそ驚き、うろたえた和己でしたが、暫くして冷静にならなければと心を落ち着けました。焦ったところでどうにもならないのです。
和己は考えます。偶然街で出会ったという事から、恐らく計画的な行動ではないと。慎吾と共に消えていたというのも、普通のカフェでの話ですから、暴力的な行動には向こうは出ていないはずです。だとすると慎吾は同意の下で付いていった事になります。では何故付いていかなければならなかったのか。何か言葉で脅される材料があったのでしょうか。ばらされて困ると言えば、何かの秘密事ですが、これについては分かりません。ヤクザの世界に付いては分からないことがまだ沢山ありますし、島崎組、下総組、両方の関係についても、悪くない付き合いがあるぐらいの知識しかありません。そして下総組といえば、組長が一吾を引き合いに出し”うちの馬鹿息子に比べたら雲泥の差だ”と言っていた事が思い出されます。それが事実だとすれば、考えなしに組長の息子が引き起こした騒動、という結論に辿り着くのでした。
しかし、慎吾は無事なのか、何処にいるのか、といった重要な事柄については何も分からないままです。おとなしく下総組組長が来るのを待つしかないようでした。
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