だらだらと。
-------------------------------------
「慎吾」
「……」
オレは階段に腰を下ろした。
正直、どうして良いか分からなかったが、むやみに近付かない方が良いと思った。
「スマン。……ごめんな」
「…」
「ごめん。もう、しない」
「…」
せっかく、慎吾と過ごせる貴重な休日だったのに。
慎吾は喜んでくれていた。
ささやかな事に、凄く幸せなことのように感じてくれていた。
ついさっきまで、とてもいい雰囲気だったのに、自分がそれを壊してしまった。
オレって男は、と改めて自己嫌悪に陥る。
思えば、オレは慎吾に謝る事が多いような気がする。
その度に、もうしないとか言っていた気がする。
自分がダメ男のように思えてくる。
「慎吾、呆れたか…?」
「…」
返事が無い。本当に愛想をつかされただろうか。
「…オレ、」
慎吾がボソリと声を発した。
「オレ、何か、すげぇ嬉しくて、いっぱいいっぱいになっちまって。…んで、そんな時にお前にあんなんされたらどうしていいかマジ分かんなくて焦ったっつうか。嫌
…っつうか、許容量超えてて。…風呂入りたかったのも、ホント、だけどさ…。自分のペースとか保てねえと怖いし」
「…そうか」
「だから…」
「ん?」
「取り敢えず風呂、入ってくる。つか、借りる、から」
そう言って立ち上がった。
「慎吾」
「ん?」
「怒ってないのか?」
「ん…もう、しないんだろ?なら、いい」
しかし、オレは慎吾に甘えている気がしていた。謝ると許してくれる慎吾に。
俺は立ち上がって慎吾の側に行き、そっと抱きしめた。
「オレを許さなくて良いから。怒ってていいから」
「…?」
「そしたらオレは、お前が許してくれるまで謝るし、お前の気が済むまで怒っていればいい」
「…オレは、別に」
「オレはお前が好きなんだ。だから、お前に無理して欲しくない。寧ろワガママ言ってくれ」
オレは慎吾の額に触れ、撫でた。
「痛かったろ。オレのが石頭だからな」
「…痛かった」
「コブにはなってねえけど、ちょっとアザになってる。冷やした方が良いかもな」
「大丈夫、だし。風呂行ってくる」
そうして、慎吾はオレの腕をすり抜けて、風呂場に向かった。
分かりやすい愛情表現をする割に、肝心な所を隠そうとする慎吾の心の内は、読み辛い。
ちゃんと言葉が届いたのか、オレの考えに間違いはなかったのか、これで良かったのか、確信は無かった。
でも、思っていた事を伝えた。
今はそれしか出来なかった。
オレは一旦部屋に戻り、恐らく着替えが入っているであろう慎吾のカバンを持って、風呂場の前に置いた。
「慎吾、荷物ココに置いとくからな」と声をかける。「うん」と返事が帰ってきたのを確認して、再び部屋に戻る。
20分ほどして、慎吾が戻ってきた。
表情は読めないが、オレが腰掛けているベッドの隣にぽすっと座った。
「慎吾、オレも風呂入ってくる」
そう言って入れ替わりに部屋を出た。
少し時間を置いた方がいい気がしていた。
時間は8時半だ。まだまだゆっくり過ごせる。
風呂から上がると、慎吾はベッドに横になっていた。
寝てしまったのかと思ったが、起きていて、ぼーっとしている。
オレはベッドを背に床に座り、雑誌を広げた。
特に今読みたいわけではなかったが、する事も特に無い。
「今度、良かったら映画行くか?ボーンアルティメイタムって映画がちょっと面白そうだぞ。アクションなら飽きないし。お前も好きだろ?」
「……」
「慎吾?…来週、何か用事あったか?別に来週じゃなくてもいいし」
「……なんだよ」
「え?」
「何、んな話とかしてんだよ」
「慎吾…?」
「仕返しかよ」
「おい」
「オレ、風呂入ってきたじゃん…。お前まで風呂とか、何か映画とか…どうでもいいし。何なんだよ…」
泣き声のような声で言い、イジけるように身体を丸めて布団の中に顔を埋めてしまう。
オレはどうにも慎吾の気持ちを読めていなかったらしい事が分かった。
「慎吾、」
「バカズキ」
「…」
布団から少し覗いている慎吾の髪を撫でる。
そして布団を少しめくると、拗ねた顔の慎吾の横顔が現れた。
「ごめんな」
こめかみにキスを落とす。
「もう謝んなくていいよ。だから、…」
慎吾に誘われるまま、オレはベッドに上がり、深いキスをした。
-------------------------------------
今年最後の更新です。
色っぽいシーンはどうにも余裕が無いのでスルーします…。
もし、また本を出す事があったら載せるかもしれませんが。
ていうか私の書くエロとか需要がそもそもあるのかっていう。
>31日2:24に拍手コメント下さった方
ブログ楽しみにして頂いてるとの事で、有難う御座います。嬉しいです!
来年、まだ少しやると思います。
それでは、良いお年をお迎え下さいませ!
「慎吾」
「……」
オレは階段に腰を下ろした。
正直、どうして良いか分からなかったが、むやみに近付かない方が良いと思った。
「スマン。……ごめんな」
「…」
「ごめん。もう、しない」
「…」
せっかく、慎吾と過ごせる貴重な休日だったのに。
慎吾は喜んでくれていた。
ささやかな事に、凄く幸せなことのように感じてくれていた。
ついさっきまで、とてもいい雰囲気だったのに、自分がそれを壊してしまった。
オレって男は、と改めて自己嫌悪に陥る。
思えば、オレは慎吾に謝る事が多いような気がする。
その度に、もうしないとか言っていた気がする。
自分がダメ男のように思えてくる。
「慎吾、呆れたか…?」
「…」
返事が無い。本当に愛想をつかされただろうか。
「…オレ、」
慎吾がボソリと声を発した。
「オレ、何か、すげぇ嬉しくて、いっぱいいっぱいになっちまって。…んで、そんな時にお前にあんなんされたらどうしていいかマジ分かんなくて焦ったっつうか。嫌
…っつうか、許容量超えてて。…風呂入りたかったのも、ホント、だけどさ…。自分のペースとか保てねえと怖いし」
「…そうか」
「だから…」
「ん?」
「取り敢えず風呂、入ってくる。つか、借りる、から」
そう言って立ち上がった。
「慎吾」
「ん?」
「怒ってないのか?」
「ん…もう、しないんだろ?なら、いい」
しかし、オレは慎吾に甘えている気がしていた。謝ると許してくれる慎吾に。
俺は立ち上がって慎吾の側に行き、そっと抱きしめた。
「オレを許さなくて良いから。怒ってていいから」
「…?」
「そしたらオレは、お前が許してくれるまで謝るし、お前の気が済むまで怒っていればいい」
「…オレは、別に」
「オレはお前が好きなんだ。だから、お前に無理して欲しくない。寧ろワガママ言ってくれ」
オレは慎吾の額に触れ、撫でた。
「痛かったろ。オレのが石頭だからな」
「…痛かった」
「コブにはなってねえけど、ちょっとアザになってる。冷やした方が良いかもな」
「大丈夫、だし。風呂行ってくる」
そうして、慎吾はオレの腕をすり抜けて、風呂場に向かった。
分かりやすい愛情表現をする割に、肝心な所を隠そうとする慎吾の心の内は、読み辛い。
ちゃんと言葉が届いたのか、オレの考えに間違いはなかったのか、これで良かったのか、確信は無かった。
でも、思っていた事を伝えた。
今はそれしか出来なかった。
オレは一旦部屋に戻り、恐らく着替えが入っているであろう慎吾のカバンを持って、風呂場の前に置いた。
「慎吾、荷物ココに置いとくからな」と声をかける。「うん」と返事が帰ってきたのを確認して、再び部屋に戻る。
20分ほどして、慎吾が戻ってきた。
表情は読めないが、オレが腰掛けているベッドの隣にぽすっと座った。
「慎吾、オレも風呂入ってくる」
そう言って入れ替わりに部屋を出た。
少し時間を置いた方がいい気がしていた。
時間は8時半だ。まだまだゆっくり過ごせる。
風呂から上がると、慎吾はベッドに横になっていた。
寝てしまったのかと思ったが、起きていて、ぼーっとしている。
オレはベッドを背に床に座り、雑誌を広げた。
特に今読みたいわけではなかったが、する事も特に無い。
「今度、良かったら映画行くか?ボーンアルティメイタムって映画がちょっと面白そうだぞ。アクションなら飽きないし。お前も好きだろ?」
「……」
「慎吾?…来週、何か用事あったか?別に来週じゃなくてもいいし」
「……なんだよ」
「え?」
「何、んな話とかしてんだよ」
「慎吾…?」
「仕返しかよ」
「おい」
「オレ、風呂入ってきたじゃん…。お前まで風呂とか、何か映画とか…どうでもいいし。何なんだよ…」
泣き声のような声で言い、イジけるように身体を丸めて布団の中に顔を埋めてしまう。
オレはどうにも慎吾の気持ちを読めていなかったらしい事が分かった。
「慎吾、」
「バカズキ」
「…」
布団から少し覗いている慎吾の髪を撫でる。
そして布団を少しめくると、拗ねた顔の慎吾の横顔が現れた。
「ごめんな」
こめかみにキスを落とす。
「もう謝んなくていいよ。だから、…」
慎吾に誘われるまま、オレはベッドに上がり、深いキスをした。
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今年最後の更新です。
色っぽいシーンはどうにも余裕が無いのでスルーします…。
もし、また本を出す事があったら載せるかもしれませんが。
ていうか私の書くエロとか需要がそもそもあるのかっていう。
>31日2:24に拍手コメント下さった方
ブログ楽しみにして頂いてるとの事で、有難う御座います。嬉しいです!
来年、まだ少しやると思います。
それでは、良いお年をお迎え下さいませ!
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無理矢理というか、もうこれ以上はイジる事も無理、とか思ってアップです。
何が悪いのか、そもそも良いのか悪いのかも分からない状態ですよ…。
などと散々前置きで言い訳してから載せるというイヤラシさ。
-------------------------------------
慎吾は、ウサギの横に置かれたカエルの置物を、ただじっと眺めていた。
お前に似てるなと言った時、慎吾が歩みを止めた。図星だったのだろうか。
自分に似てるカエルを、オレに渡したいと思ったのだろうか。
オレの部屋に飾られたカエル。
たったこれだけの事に、感じ入っているように見えた。
半分以上はオレの想像だ。
だけど、当たっている気がした。
コイツは慎吾のくせに、妙に健気で、殊勝な一面をオレに見せるから。
そんな面を見せられる度、オレはどうにもコイツが可愛く、愛しく思えてしまう。
オレは、慎吾の身体を抱きしめて、感情を込めて名前を呼んだ。
突っ立ったままで身動きしない慎吾を、もう一度静かに呼ぶ。
すると顔を少しこちらに向けた。
体が硬直してしまったかのような慎吾の頬を、指の背で軽く撫でる。
「好きだ、お前が」
「…」
「好きだ」
「…」
「慎吾」
「…」
慎吾の目には涙が浮かんでいた。
「オレ、も好…」
慎吾の涙を指で拭う。
「ヤベ…何か泣いてるオレ」
「慎吾」
改めて正面から抱きしめ、それから口付ける。
口付けはどんどん深くなっていき、慎吾が少し苦しげに息を吐く。
オレはもう我慢できなくて、手を引いてベッドの方に連れて行った。
そこで押し倒す。
再びキスをしようとした時、「ちょ、待って」と、慎吾の静止が入った。
「何だ」
正直、早く続きがやりたいオレは、余裕なく聞いた。
「や、だって。む…無理」
何が無理なんだ。
オレは無視して手首を掴んで押さえつけ、首筋に舌を這わせた。
「和己!…オレ、風呂入ってねぇし!」
「別に気にならねえよ」
「オレが気になる!」
「気にすんな」
まだ何か言おうとする慎吾の口を口で塞いだ。
舌を深く絡める。
「ん~~!」
まだ抵抗している。
だけどあんな顔を見せておいて、無理だとか言われた所で、それこそこっちが無理だ。
おとなしくヤられとけ、などとかなり自己中心的な事を考えていた。
そこでオレは早いトコ理性を奪ってしまおうと、慎吾の股間をジーンズの上から刺激し始めた。
「~~~!!」
更にベルトを外そうと手を掛けると、本格的に慎吾が暴れ始め、塞いでいた口が離れる。
「和己ッ!」
怒鳴ったと思ったら、頭突きをされた。
余裕がなかったんだろうが、かなり本気の頭突きをキメられた。お互い痛みに悶絶する。
暫くして慎吾が涙目になりつつも立ち上がり、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「慎吾!」
まさか、帰ったのか。
そこでようやく我に返る。
しまった、いやそうじゃない。嫌がってたのにオレは何をやってたんだと。
目の前の慎吾を早く自分のものにしてしまいたくて、軽く理性を失っていた。
暫く呆然とする。が、立ち上がり、部屋から出て階段を下りた。
すると、気配があった。
暗い玄関の前で、慎吾が壁を背にしてヒザを抱えていた。
オレに気が付くと、更に縮こまった。
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何が悪いのか、そもそも良いのか悪いのかも分からない状態ですよ…。
などと散々前置きで言い訳してから載せるというイヤラシさ。
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慎吾は、ウサギの横に置かれたカエルの置物を、ただじっと眺めていた。
お前に似てるなと言った時、慎吾が歩みを止めた。図星だったのだろうか。
自分に似てるカエルを、オレに渡したいと思ったのだろうか。
オレの部屋に飾られたカエル。
たったこれだけの事に、感じ入っているように見えた。
半分以上はオレの想像だ。
だけど、当たっている気がした。
コイツは慎吾のくせに、妙に健気で、殊勝な一面をオレに見せるから。
そんな面を見せられる度、オレはどうにもコイツが可愛く、愛しく思えてしまう。
オレは、慎吾の身体を抱きしめて、感情を込めて名前を呼んだ。
突っ立ったままで身動きしない慎吾を、もう一度静かに呼ぶ。
すると顔を少しこちらに向けた。
体が硬直してしまったかのような慎吾の頬を、指の背で軽く撫でる。
「好きだ、お前が」
「…」
「好きだ」
「…」
「慎吾」
「…」
慎吾の目には涙が浮かんでいた。
「オレ、も好…」
慎吾の涙を指で拭う。
「ヤベ…何か泣いてるオレ」
「慎吾」
改めて正面から抱きしめ、それから口付ける。
口付けはどんどん深くなっていき、慎吾が少し苦しげに息を吐く。
オレはもう我慢できなくて、手を引いてベッドの方に連れて行った。
そこで押し倒す。
再びキスをしようとした時、「ちょ、待って」と、慎吾の静止が入った。
「何だ」
正直、早く続きがやりたいオレは、余裕なく聞いた。
「や、だって。む…無理」
何が無理なんだ。
オレは無視して手首を掴んで押さえつけ、首筋に舌を這わせた。
「和己!…オレ、風呂入ってねぇし!」
「別に気にならねえよ」
「オレが気になる!」
「気にすんな」
まだ何か言おうとする慎吾の口を口で塞いだ。
舌を深く絡める。
「ん~~!」
まだ抵抗している。
だけどあんな顔を見せておいて、無理だとか言われた所で、それこそこっちが無理だ。
おとなしくヤられとけ、などとかなり自己中心的な事を考えていた。
そこでオレは早いトコ理性を奪ってしまおうと、慎吾の股間をジーンズの上から刺激し始めた。
「~~~!!」
更にベルトを外そうと手を掛けると、本格的に慎吾が暴れ始め、塞いでいた口が離れる。
「和己ッ!」
怒鳴ったと思ったら、頭突きをされた。
余裕がなかったんだろうが、かなり本気の頭突きをキメられた。お互い痛みに悶絶する。
暫くして慎吾が涙目になりつつも立ち上がり、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「慎吾!」
まさか、帰ったのか。
そこでようやく我に返る。
しまった、いやそうじゃない。嫌がってたのにオレは何をやってたんだと。
目の前の慎吾を早く自分のものにしてしまいたくて、軽く理性を失っていた。
暫く呆然とする。が、立ち上がり、部屋から出て階段を下りた。
すると、気配があった。
暗い玄関の前で、慎吾が壁を背にしてヒザを抱えていた。
オレに気が付くと、更に縮こまった。
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6時半頃にはお互い、腹が空きはじめたので夕飯を食べに行く事にした。
土曜だけあって店内は混んでおり、親子連れも多い。時折、素っ頓狂な子供の声が混じって聞こえてきたりもする。
もうちょっと静かなところが良かったかとも思ったが、和己は全く気にしていないようだった。
メニューを広げて注文を決める。料金に合わせてドリンクからメイン、サラダなど、好きなものを選べる為様々な組み合わせが出来るので、オレは少し迷ったりする。
が、和己はコレとコレとコレ、とさっさと決めてしまった。即断即決。こいつらしい。
腹一杯食べた和己は満足な表情を浮かべていたが、オレはやっぱりちょっと物足りなかった。
リングのお返しとしては。
帰り道、結構美味かったな、なんて言いながらのんびりと道を歩く。
こうやって和己と雑談をしたりして、何でもない平凡な時間が嬉しい。
時期が時期だけに、日が落ちるのが早くなってきていて既に空は薄暗いが、商店街を通るとそれぞれの店の明かりが煌々とついていた。
明日が日曜という事もあって人通りも多く、賑やかだ。
オレは、横を通り縋ろうとした民芸店の店先に、小さな置物があるのが目に入った。
「……」
足を止める。
和己に待っててくれと言い、それを手にとってレジに向かう。
店から出てきたオレは、和己にそれを差し出した。
「やる」
「は?」
「…や、別に意味ねーんだけど。夜メシ代安くついたし。何か、良かったから」
「……?」
良く分からないといった感じの和己は、その場で袋から出し、土人形と書かれた小箱のフタを開けた。
包み紙から覗いたのは、小さなカエルの置物だ。
やっぱり良く分からない。そんな顔をしている。
「何でまたコレなんだ?」
そう言いつつ箱から取り出すと、置物がコロコロと音を立てた。中が空洞になっていて、鈴のような音がする。それをしげしげと眺めていた。
「だから、特に意味ねえって。ウサギの横にでも置いといてくれ」
そう言って、オレは歩き出そうとした。
「…なんか、お前に似てんな」
「…」
オレは、歩き出そうとした足を止めた。
店先に飾ってあったカエルが目に入ったとき、オレは、眠たそうな半開きの目がちょっと自分に似てるかも、と思ったのだ。
300円程度の安いものだったけど、和己が持っててくれたら良いなと思った。
やっぱり乙女化してるのかもしれない。
でも、
「ウサギの横に飾っとくから」
そう言ってくれた和己の言葉が、やっぱり嬉しかった。
和己が、ウサギの横にカエルを置いた。
和己の部屋の中にあって、オレを感じさせる物。
それがこのカエルだ。
じわりと幸せな気分が滲み出てくる。
先週の休みといい、今週といい、なんだか良い事尽くめな気がする。
こう続くと、こんな幸せで大丈夫なのかなんて思ったりもしながら暫くカエルを眺めていたら、背後から抱きしめられた。
慎吾、と思いを込めて名を呼ばれる。
オレは固まった。
こんな時に、こんな風に呼ばれると、オレはもう、それだけで一杯一杯になってしまいそうだった。
-------------------------------------
ストックがマジメに無くなりました……どうする。
でもアクセス解析を見てみると、今日はブログへのアクセスが多かったのでこれは更新しないと!と思ってしまって、後先考えない更新に(^^;
>24日1:25に拍手コメント下さった方へ
幸せと言っていただけて、私も幸せになりました!
6時半頃にはお互い、腹が空きはじめたので夕飯を食べに行く事にした。
土曜だけあって店内は混んでおり、親子連れも多い。時折、素っ頓狂な子供の声が混じって聞こえてきたりもする。
もうちょっと静かなところが良かったかとも思ったが、和己は全く気にしていないようだった。
メニューを広げて注文を決める。料金に合わせてドリンクからメイン、サラダなど、好きなものを選べる為様々な組み合わせが出来るので、オレは少し迷ったりする。
が、和己はコレとコレとコレ、とさっさと決めてしまった。即断即決。こいつらしい。
腹一杯食べた和己は満足な表情を浮かべていたが、オレはやっぱりちょっと物足りなかった。
リングのお返しとしては。
帰り道、結構美味かったな、なんて言いながらのんびりと道を歩く。
こうやって和己と雑談をしたりして、何でもない平凡な時間が嬉しい。
時期が時期だけに、日が落ちるのが早くなってきていて既に空は薄暗いが、商店街を通るとそれぞれの店の明かりが煌々とついていた。
明日が日曜という事もあって人通りも多く、賑やかだ。
オレは、横を通り縋ろうとした民芸店の店先に、小さな置物があるのが目に入った。
「……」
足を止める。
和己に待っててくれと言い、それを手にとってレジに向かう。
店から出てきたオレは、和己にそれを差し出した。
「やる」
「は?」
「…や、別に意味ねーんだけど。夜メシ代安くついたし。何か、良かったから」
「……?」
良く分からないといった感じの和己は、その場で袋から出し、土人形と書かれた小箱のフタを開けた。
包み紙から覗いたのは、小さなカエルの置物だ。
やっぱり良く分からない。そんな顔をしている。
「何でまたコレなんだ?」
そう言いつつ箱から取り出すと、置物がコロコロと音を立てた。中が空洞になっていて、鈴のような音がする。それをしげしげと眺めていた。
「だから、特に意味ねえって。ウサギの横にでも置いといてくれ」
そう言って、オレは歩き出そうとした。
「…なんか、お前に似てんな」
「…」
オレは、歩き出そうとした足を止めた。
店先に飾ってあったカエルが目に入ったとき、オレは、眠たそうな半開きの目がちょっと自分に似てるかも、と思ったのだ。
300円程度の安いものだったけど、和己が持っててくれたら良いなと思った。
やっぱり乙女化してるのかもしれない。
でも、
「ウサギの横に飾っとくから」
そう言ってくれた和己の言葉が、やっぱり嬉しかった。
和己が、ウサギの横にカエルを置いた。
和己の部屋の中にあって、オレを感じさせる物。
それがこのカエルだ。
じわりと幸せな気分が滲み出てくる。
先週の休みといい、今週といい、なんだか良い事尽くめな気がする。
こう続くと、こんな幸せで大丈夫なのかなんて思ったりもしながら暫くカエルを眺めていたら、背後から抱きしめられた。
慎吾、と思いを込めて名を呼ばれる。
オレは固まった。
こんな時に、こんな風に呼ばれると、オレはもう、それだけで一杯一杯になってしまいそうだった。
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ストックがマジメに無くなりました……どうする。
でもアクセス解析を見てみると、今日はブログへのアクセスが多かったのでこれは更新しないと!と思ってしまって、後先考えない更新に(^^;
>24日1:25に拍手コメント下さった方へ
幸せと言っていただけて、私も幸せになりました!
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次の週の土曜、練習が終わってから和己の家に泊りがけで行く事になった。
泊りがけ。つまり、色々アレコレを含むお泊りだ。
珍しく、和己の家は家族旅行で全員出掛けており、誰もいないという事だった。
そんな訳で練習が終わって家で昼飯を食い、和己の家にやってきた。正直浮き足立っている。
部屋にある例のウサギですら、今は可愛く見えるほどだ。いや、元々姿形は可愛い縫いぐるみなんだけど。
オレは土日ゆっくり出来るという事で、とにかく和己にべったりしつつ、まったり過ごしたいと思っていた。
勿論、やる事もやりたいけど。
そこでオレは早速、ベッドの上に胡坐を掻いて雑誌を広げた和己に近付き、背後から腰に腕を回して背中に寄りかかった。
「おい慎吾」
「ん?」
「重い」
「んな重くねーし」
「いや重いから」
「んだよ」
そう言いつつ、顔を首筋に摺り寄せる。
うなじを短く刈り上げているので少しチクチクするが、和己の匂いと体温が嬉しくなる。
今度は肩に額を乗せる。
「重い!」
「うるせーなー、こんくらい。つかさー、何読んでんの」
「BRUTUS、映画特集」
律儀に答える。
「ふーん」
「って、お前全然見てないだろ。興味も無いくせに聞くな」
確かに雑誌に興味は無い。無いけど、構って欲しいのだ。
「和己ー」
呼んでみる。
「何だよ」
「……」
「おい!…何なんだよ」
「……」
呼んだはいいが、別に用があったわけでもないオレの沈黙に対し、はぁーっ、と溜息をついて、再び雑誌に視線を落とした。
「なーなー」
また声をかける。
「テメ、何だよ。嫌がらせか」
ちょっと苛立ちが見え始めた。
「違ェって。ほら、リング」
先日、和己に買って貰ったばかりのリングを嵌めている、右手人差し指を目の前に掲げてみせる。
「…あぁ。…それが?」
「それが?…って、素っ気ねぇな~。…何か、良くね?てか良いよな」
「全然意味がわからねえよ」
オレの、全く内容のない呼びかけに怒りを隠さなくなってきた。
そろそろちゃんとした方が良さそうだ。
「今日さ~、天気良いよな」
「そうだな。…何だ、どっか行きたかったのか?」
「いや、そうじゃねえけど。今は、ってか夕飯まではココにいる。7時ぐらいになったらさ、食べに行こうぜ。ほら、先週、食いモンが良いって言ってたろ」
すると暫し逡巡した後「…あぁ、あの話か」、と思い出したように言い、「じゃあ奢ってくれんのか?」と言った。
「うん。どこで食う?つか何食べたい?」
「別に何でも。色々、腹一杯食えるトコが良いな」
相変わらずロマンも何もあったもんじゃなかった。
別に和己にロマンを求める気は無いが、友達やってた頃と寸分違わぬこの返事はどうなんだと思う。
少々不満に思いつつ、和己が満足しそうな所を考えてみる。
というか、考えなくてもファミレスで充分満足しそうだ。
しかしそれだとちょっと寂しい。
そこで、系統からいうとファミレスに近いチェーン店だけど、そこそこ美味しいイタリアン系の店があるので、そこはどうだろうと思った。
かなりメニューのバリエーションも多く、ピザ一つとっても、デカいし腹もふくれる筈だ。
和己に提案すると、何の異論も無くOKが出た。というか、特に考えてない感じだったが。
ちなみにその後も、オレは主に和己にべったりしていた。
鬱陶しいし重いし何なんだ、という和己の反応は最もだったけど、そこは半分無視した。
雑誌を読み終えると和己は俺に向き直った。
「慎吾」
「ん?」
「構って欲しいならそう言え」
「…」
「構ってやるから。オレなりに」
オレなり?微妙に嫌な予感がした。
目の前の和己がニヤリと笑った。
「ぎゃははははははは!うははははは!やめっ、マジ…っぎゃはははは!はっはっはっはぁっ」
オレはベッドに押し倒されて、くすぐり倒されていた。脇やら足の裏やら脇腹やら、あらゆるポイントを突いてくる。
はっきり言って、オレには拷問だ。くすぐったがりの人間にとって、容赦なくくすぐられるという事がどういう事かコイツには分かってない。本当に辛いのだ。涙目で、笑いすぎで呼吸困難になるぐらいの勢いなのだ。今だけは、目の前のコイツの首を絞めたいと正直思った。
とにかく、この事態を打開しようと、笑い倒しながらも両足を和己の首に掛け、締めた。そのまま倒しにかかる。
「うおっ」
思わぬ反撃に和己がたじろいで、ベッドに倒れる。
よし、とそのまますぐに馬乗りになった。
が、更に脇に手を伸ばそうとしてくるので、慌てて手首を掴んで体重をかけて押さえ込んだ。
「はあっはあっはあっ…コノヤロウ、マジ、ふざけんな…っ」
オレは息も絶え絶えだったが、ようやくくすぐり地獄から脱出し、何とか一息つく事が出来た。
「お前、弱いんだなぁ、くすぐられんの。感じやすいのか?」
こんな体勢になっても、余裕の表情で聞いてくる。
テメ…っ、人の気も知らねえでこのエロオヤジ!と心の中で罵った。
オレの表情から怒り具合が伝わったのか、
「…慎吾、ゴメン。もうしねーから」
そう謝ってきた。オレは、和己に素直に謝られると弱かった。つい許してしまう。
結局、好きになっちまった方の弱みだ、と思う。
「マジで、もうすんなよ」
そう言って、手首を離した。
上体を起こそうとすると、逆に手首を取られた。
「でもさ」
オレは、また何かされるのかとビクリとした。
「この体勢は良いよな」
そう言って、引っ張られるままに和己の上に身体を倒してしまった。
「ちょ、んんっ」
顔を両手で固定され、キスされる。息がまだ整っていない状態だったので少し苦しい。
しかし抗議したい気持ちを、嬉しい気持ちが上回ってしまうので、結局オレは何も言えない。
ひとしきりキスされて、オレは和己の上に身体を預けたまま、肩に顔を埋めた。
オレの体重が、殆ど和己にかかっている状態だ。
「……重くねえの?」
「ん?重いよ」
「でも押しのけねえの?」
「今はいい」
そうして、頭を軽く撫でられた。
どうしよう、幸せだ。
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次の週の土曜、練習が終わってから和己の家に泊りがけで行く事になった。
泊りがけ。つまり、色々アレコレを含むお泊りだ。
珍しく、和己の家は家族旅行で全員出掛けており、誰もいないという事だった。
そんな訳で練習が終わって家で昼飯を食い、和己の家にやってきた。正直浮き足立っている。
部屋にある例のウサギですら、今は可愛く見えるほどだ。いや、元々姿形は可愛い縫いぐるみなんだけど。
オレは土日ゆっくり出来るという事で、とにかく和己にべったりしつつ、まったり過ごしたいと思っていた。
勿論、やる事もやりたいけど。
そこでオレは早速、ベッドの上に胡坐を掻いて雑誌を広げた和己に近付き、背後から腰に腕を回して背中に寄りかかった。
「おい慎吾」
「ん?」
「重い」
「んな重くねーし」
「いや重いから」
「んだよ」
そう言いつつ、顔を首筋に摺り寄せる。
うなじを短く刈り上げているので少しチクチクするが、和己の匂いと体温が嬉しくなる。
今度は肩に額を乗せる。
「重い!」
「うるせーなー、こんくらい。つかさー、何読んでんの」
「BRUTUS、映画特集」
律儀に答える。
「ふーん」
「って、お前全然見てないだろ。興味も無いくせに聞くな」
確かに雑誌に興味は無い。無いけど、構って欲しいのだ。
「和己ー」
呼んでみる。
「何だよ」
「……」
「おい!…何なんだよ」
「……」
呼んだはいいが、別に用があったわけでもないオレの沈黙に対し、はぁーっ、と溜息をついて、再び雑誌に視線を落とした。
「なーなー」
また声をかける。
「テメ、何だよ。嫌がらせか」
ちょっと苛立ちが見え始めた。
「違ェって。ほら、リング」
先日、和己に買って貰ったばかりのリングを嵌めている、右手人差し指を目の前に掲げてみせる。
「…あぁ。…それが?」
「それが?…って、素っ気ねぇな~。…何か、良くね?てか良いよな」
「全然意味がわからねえよ」
オレの、全く内容のない呼びかけに怒りを隠さなくなってきた。
そろそろちゃんとした方が良さそうだ。
「今日さ~、天気良いよな」
「そうだな。…何だ、どっか行きたかったのか?」
「いや、そうじゃねえけど。今は、ってか夕飯まではココにいる。7時ぐらいになったらさ、食べに行こうぜ。ほら、先週、食いモンが良いって言ってたろ」
すると暫し逡巡した後「…あぁ、あの話か」、と思い出したように言い、「じゃあ奢ってくれんのか?」と言った。
「うん。どこで食う?つか何食べたい?」
「別に何でも。色々、腹一杯食えるトコが良いな」
相変わらずロマンも何もあったもんじゃなかった。
別に和己にロマンを求める気は無いが、友達やってた頃と寸分違わぬこの返事はどうなんだと思う。
少々不満に思いつつ、和己が満足しそうな所を考えてみる。
というか、考えなくてもファミレスで充分満足しそうだ。
しかしそれだとちょっと寂しい。
そこで、系統からいうとファミレスに近いチェーン店だけど、そこそこ美味しいイタリアン系の店があるので、そこはどうだろうと思った。
かなりメニューのバリエーションも多く、ピザ一つとっても、デカいし腹もふくれる筈だ。
和己に提案すると、何の異論も無くOKが出た。というか、特に考えてない感じだったが。
ちなみにその後も、オレは主に和己にべったりしていた。
鬱陶しいし重いし何なんだ、という和己の反応は最もだったけど、そこは半分無視した。
雑誌を読み終えると和己は俺に向き直った。
「慎吾」
「ん?」
「構って欲しいならそう言え」
「…」
「構ってやるから。オレなりに」
オレなり?微妙に嫌な予感がした。
目の前の和己がニヤリと笑った。
「ぎゃははははははは!うははははは!やめっ、マジ…っぎゃはははは!はっはっはっはぁっ」
オレはベッドに押し倒されて、くすぐり倒されていた。脇やら足の裏やら脇腹やら、あらゆるポイントを突いてくる。
はっきり言って、オレには拷問だ。くすぐったがりの人間にとって、容赦なくくすぐられるという事がどういう事かコイツには分かってない。本当に辛いのだ。涙目で、笑いすぎで呼吸困難になるぐらいの勢いなのだ。今だけは、目の前のコイツの首を絞めたいと正直思った。
とにかく、この事態を打開しようと、笑い倒しながらも両足を和己の首に掛け、締めた。そのまま倒しにかかる。
「うおっ」
思わぬ反撃に和己がたじろいで、ベッドに倒れる。
よし、とそのまますぐに馬乗りになった。
が、更に脇に手を伸ばそうとしてくるので、慌てて手首を掴んで体重をかけて押さえ込んだ。
「はあっはあっはあっ…コノヤロウ、マジ、ふざけんな…っ」
オレは息も絶え絶えだったが、ようやくくすぐり地獄から脱出し、何とか一息つく事が出来た。
「お前、弱いんだなぁ、くすぐられんの。感じやすいのか?」
こんな体勢になっても、余裕の表情で聞いてくる。
テメ…っ、人の気も知らねえでこのエロオヤジ!と心の中で罵った。
オレの表情から怒り具合が伝わったのか、
「…慎吾、ゴメン。もうしねーから」
そう謝ってきた。オレは、和己に素直に謝られると弱かった。つい許してしまう。
結局、好きになっちまった方の弱みだ、と思う。
「マジで、もうすんなよ」
そう言って、手首を離した。
上体を起こそうとすると、逆に手首を取られた。
「でもさ」
オレは、また何かされるのかとビクリとした。
「この体勢は良いよな」
そう言って、引っ張られるままに和己の上に身体を倒してしまった。
「ちょ、んんっ」
顔を両手で固定され、キスされる。息がまだ整っていない状態だったので少し苦しい。
しかし抗議したい気持ちを、嬉しい気持ちが上回ってしまうので、結局オレは何も言えない。
ひとしきりキスされて、オレは和己の上に身体を預けたまま、肩に顔を埋めた。
オレの体重が、殆ど和己にかかっている状態だ。
「……重くねえの?」
「ん?重いよ」
「でも押しのけねえの?」
「今はいい」
そうして、頭を軽く撫でられた。
どうしよう、幸せだ。
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